福岡産ニンニクで食フェス 東京の広告マンが仕掛けた事情 [福岡県]

ニンニクを手に「福岡産“超”にんにくフェス2018」をPRする曽我将さん(左)と山本周平さん=福岡市・天神(撮影・木村貴之)
ニンニクを手に「福岡産“超”にんにくフェス2018」をPRする曽我将さん(左)と山本周平さん=福岡市・天神(撮影・木村貴之)
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仕事帰りのサラリーマンやOLらでにぎわう「福岡産“超”にんにくフェス2018」の会場=福岡市・天神の西日本新聞会館屋上
仕事帰りのサラリーマンやOLらでにぎわう「福岡産“超”にんにくフェス2018」の会場=福岡市・天神の西日本新聞会館屋上
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18種類のニンニク料理と25種類の飲み物が全品500円均一。にんにくの丸揚げ(左下)とガーリックチキン(左上)、スパークリングワインカクテル(右)は味の相性もインスタ映えも良さそう
18種類のニンニク料理と25種類の飲み物が全品500円均一。にんにくの丸揚げ(左下)とガーリックチキン(左上)、スパークリングワインカクテル(右)は味の相性もインスタ映えも良さそう
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ニンニク料理を楽しんだ後、ニンニクの山を囲み記念撮影をする来場客。フェス体験はSNSで広く発信される?
ニンニク料理を楽しんだ後、ニンニクの山を囲み記念撮影をする来場客。フェス体験はSNSで広く発信される?
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会場では地元ミュージシャンらが登場するステージイベントも。エンターテインメントの追究は米ギルロイのフェスを参考にしている
会場では地元ミュージシャンらが登場するステージイベントも。エンターテインメントの追究は米ギルロイのフェスを参考にしている
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 秋の風物詩といえば食フェス。福岡市ではビール祭りやはしご酒企画などが浸透する中、後発ながらなかなかの盛況ぶりを見せる食フェスがある。福岡産ニンニクを使った創作料理やスイーツを提供する「福岡産“超”にんにくフェス」。福岡ってニンニクの産地だっけ?と疑問もよぎるが、気になるのは舞台裏。仕掛け人は東京の広告マンなのだ。

福岡産ニンニクで創作料理&スイーツ

 大手広告代理店から独立し、2014年に都内で会社設立した曽我将(すすむ)さん。WEB広告の企画・制作を本業に、「その傍ら」として「食フェス主催」を掲げる。「祭り好きだから」と笑うが、本音は別にあるようだ。愛知県出身。なぜ福岡産ニンニクなのか。きっかけは4年前。独立後の初仕事が福岡県久留米市の健康食品メーカーの広告制作で、原料は同県八女市で生産された無農薬ニンニクだった。

 ニンニクといえば流通量の大部分を中国産が占め、シェアは「8割超」とされる。国産なら青森県がトップ。農林水産省の統計で16年収穫量は全国約2万トンのうち1万4200トンに上る。福岡産は全国12位で「上位」に映るが、収穫量はわずか200トン。「青森以外はドングリの背比べ。九州で福岡が突出しているわけでもない。なのにフェスで産地を支援してくれるとは。いい励みになる」と福岡県農林水産部は歓迎する。

 「加工品としても食材としても、僕と相性が良かった。福岡産ニンニクは香りが強く、新陳代謝や糖質分解を促し疲労回復や美容にいい成分・アリシンを豊富に含む。国産は外国産の10倍近い価格で敷居が高そうだけど、安全・安心で何よりおいしい。国産をアピールしたくなった」と曽我さん。早速、福岡産ニンニクを使った食フェス開催を思い立ち、企画を進める中、急きょ米国に飛んだ。

 向かったのはカリフォルニア州中西部に位置し、米屈指のニンニクの産地で知られるギルロイ市。目当ては、ここで毎夏開かれる「ギルロイ・ガーリックフェスティバル」だ。広大な広場にニンニク料理の屋台が無数に並び、ロックやジャズ、ゴスペルなどのライブイベントも催される祭り。「地産地消型フェスの先進例。ニンニク風味のポテトばかり目に付いたのは残念だけど、吸引力のすごさは刺激になった。動員数は3日間で20万人。人口5万人前後の小さな街に4倍もの人を引き寄せるのだから」。曽我さんは興奮気味に振り返る。

 そして16年夏、自前のフェス開催にこぎ着けた。東京・新宿の大久保公園。5日間で目標動員の「延べ1万人超」を達成した。社長といっても個人経営。「1万人規模の食フェスを個人レベルで開催するのは全国初かも」。奏功したのはメディアやSNSを通じて「国産ニンニク」を前面に出すPR戦略だ。しかし、余韻に浸る間もなく、フェス仲間との出会いを機に、文字通りの「地産地消フェス」を福岡で仕掛けることになる。

 昨年10月、福岡市・天神の福岡ビル屋上で2回目を開き、11日間で約3300人を動員。福岡で留学支援ベンチャーを運営する山本周平さん(27)がキーマンになった。同じ愛知出身。初回は個人のボランティアで参加し、2回目から共同企画者に。従業員らも総出で、組織ぐるみでフェスを支える。起業地の大阪にあった拠点を福岡に移したのも、フェスの天神開催の後押しになった。さらに料理供給拠点となる福岡市の飲食店を曽我さんと共同経営し、フェスのPR、営業の最前線で奔走。恐らく曽我さんより一回りは若いが、一心同体のパートナーといえる。

 東京の広告マンが仕掛け、若手起業家の支援で福岡に浸透しつつある「にんにくフェス」。そもそも二人は企画にどんな思いを込めているのか。曽我さんが語りだす。

 「食欲をそそる香味野菜の代表格。ニンニクの香りが街に漂えば、家に閉じこもっている人は出掛けたくなり、職場と自宅を往復するだけの人は仕事帰りに寄り道したくなる。地域にとっても経済効果として表れるでしょう。仕事のモットーは『良いニュースを作る』。明るい話題は出会いの輪を広げるので」。フェスを舞台にした情報発信に、二人は本業に匹敵する熱い情熱を注いでいる。

 今回の会場はなんと、わが職場がある西日本新聞会館屋上。夜に仕事を終えて下りのエレベーターに乗り込み、ニンニクの残り香に気付くたびに迷ってしまう。上りの便に乗り換え、寄り道してみるかどうか、と。

=2018/10/29 西日本新聞=

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