【動画あり】「世界一買い物が便利な街」福岡市・天神の挑戦 ネット通販に対抗、異例の連帯 [福岡県]

天神地下街で開かれたファッションショーでポーズを決め、最新の秋冬物を紹介する女性モデル=福岡市・天神(撮影・木村貴之)
天神地下街で開かれたファッションショーでポーズを決め、最新の秋冬物を紹介する女性モデル=福岡市・天神(撮影・木村貴之)
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電飾仕掛けの風船を手に、天神地下街の通路を練り歩く女性モデルたち。その装いは地元商店街の商品でコーディネートされていた
電飾仕掛けの風船を手に、天神地下街の通路を練り歩く女性モデルたち。その装いは地元商店街の商品でコーディネートされていた
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「天神ファッションウイーク」のオープニングセレモニーで、天神の「回遊性」「多様性」をアピールする渡辺裕康事務局長(中央)
「天神ファッションウイーク」のオープニングセレモニーで、天神の「回遊性」「多様性」をアピールする渡辺裕康事務局長(中央)
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 ファッションの秋。数多くの衣料品店が集積する福岡市・天神で「天神ファッションウイーク」と銘打つイベントがあった。店舗が軒を並べる商業施設や商店街が趣向を凝らした仕掛けで消費者を呼び込み、新作の秋冬物を売り込む企画。シンプルなネーミングから、年中どこかの街で開かれていそうな、ありふれた催事の印象もあるが、実は大違い。時代の潮流を映しつつ、天神の特性を生かした唯一無二の手法で臨む「挑戦」なのだ。

 企画したのは、天神16の商業施設・商店街でつくる「天神ユナイテッド」(TU)。各施設を一つの「巨大な仮想モール」に見立て、共通スタンプの運営などに取り組むプロジェクト組織で、各施設が加盟する親睦団体「都心界」を母体に今春発足した。

 イベントは衣料品業界で「秋の実売期」と呼ばれる11月上旬、12商業施設・商店街で1週間にわたり開かれた。天神地下街の通路をランウエーに女性モデル8人が練り歩くファッションショーや、有名人を交えたトークショー、福岡やアジアのブランドを紹介する催しで最新秋冬物のトレンドやコーディネートを紹介。期間中、各施設の一押し商品や特典を合同発信するほか、週末夜の来店客にドリンクやスイーツを振る舞ったり、隣接する施設同士で特別割引を共有したりして、売り上げアップにつながる成果を出した。

 前面に掲げたのは「もてなし」。ここに時代性と天神の特性が凝縮されている。インターネット通販市場の拡大傾向が続く中、危機感を募らせるのはリアル(実)店舗。天神では、本来は競合関係にある施設同士が手を組み、ネット通販に対抗しようというわけだ。

 経済産業省の「2017年電子商取引(EC)に関する市場調査」によると、消費者向けECの市場規模は16・5兆円(前年比9・1%増)。物販に限れば8・6兆円(同7・5%増)に上り、スマートフォン経由は35%を占める。近年はネットオークション市場も拡大傾向にあり、その市場規模は1兆1200億円。EC市場全体を押し上げる。

 TUの渡辺裕康事務局長が訴える。「だからこそ、リアル店舗ならではのもてなしをアピールするとき。常に“顔”を見せて営業するのがリアル店舗。ネット通販のデジタル戦略にアナログ戦術で挑みたい」。こうした決意を各施設が共有し、垣根を越えた連帯が実現した。1948年の発足以来、「天神はひとつ」を合言葉に天神の振興に取り組む都心界の精神を受け継ぐTU。大手広告代理店の関係者は「百貨店まで含め競合同士が連携する文化が根付くのは天神だけ。東京や大阪では考えられない」と目を丸くしているという。

 異例とも言える「連帯」は街の特性が大きく関わっている。裏付けるデータがある。「森ビル」ゆかりの森記念財団都市戦略研究所(東京)が今春まとめた調査結果。世界各都市で半径400メートル圏内にある多店舗型大規模商業施設(延べ床面積3千平方メートル以上、テナント10以上)の数を調べたところ、福岡市・天神は21施設に上り、主要8都市(東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ミラノ、上海、シンガポール、ソウル)を上回って世界最多となった。

 「商業施設が集積すればショッピングの回遊性は格段にアップ。さらに天神の施設は婦人服だけでもティーンズやヤングアダルト、ミセス、ハイミセス…と多様性に富んでいる。調査結果で頂いた『世界一、買い物の利便性が高い街』のお墨付き。生かさない手はない」。渡辺事務局長は力を込める。

 回遊性の高さと多様性を武器にしたイベントこそが天神ファッションウイークなのだ。課題はいかに消費者を街に呼び込むか―にある。今年はTUの発足初年度ながらさまざまな挑戦があった。9月に引退した歌手の安室奈美恵さんのラスト1カ月を、街を挙げて応援する「天神アムロマンス」もその一つ。天神の街角を「安室ちゃん」一色に染める企画は九州内外から多くのファンを呼び込んだ。今月は幅広い年代の吹奏楽愛好家たちが街角で演奏する「天神クラシック」を企画。常に天神を舞台にした話題作りにいそしんでいる。

 「福岡空港から地下鉄で10分、博多港からはタクシーで5分。インバウンド(訪日外国人客)に対し、もっと積極的に攻めていいかも」と渡辺事務局長。「世界一」のお墨付きをどう生かすか。巨大仮想モールの舞台裏で調整役は日夜、施設間を走っては戦略を練る。

=2018/11/12 西日本新聞=

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