福岡マラソン 引きこもり越え…初出場で完走 視覚障害の男性 [福岡県]

妻光枝さん(左から2人目)の肩を抱き、伴走者やランナー仲間と記念写真を撮る秋山敏隆さん(中央)
妻光枝さん(左から2人目)の肩を抱き、伴走者やランナー仲間と記念写真を撮る秋山敏隆さん(中央)
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 自らの走りが希望の「光」をくれた-。11日にあった福岡マラソンで5・2キロのファンランに出場した視覚障害者の福岡市早良区の秋山敏隆さん(72)が初出場で完走した。伴走者とフィニッシュした際の満足げな表情に視力を失って一時期引きこもった過去の面影はない。「家内や仲間のおかげ」。秋山さんから感謝の言葉と笑顔があふれた。

 タンクローリーの運転手だった秋山さんは40代で緑内障との診断を受けた。手術を繰り返したものの、50歳すぎから左目は失明。右目も光を感じる程度でほとんど見えなくなった。55歳で会社を正式に退職。その後は近所の目を気にして3年間、自宅に引きこもる生活が続いたという。

 心が折れかけた後も秋山さんに寄り添ったのは妻光枝さん(71)だった。光枝さんの付き添いで2012年、障害者のリハビリ施設へ通い始めた。白杖(はくじょう)での歩行に慣れた頃、光枝さんから提案があった。「歩くだけじゃもったいない。走ってみたら」。翌年から視覚障害者と伴走者でつくる「大濠公園ブラインドランナーズクラブ」に参加した。

 「秋山さん、よく来たね」。月1回の練習会で、仲間からの声掛けがうれしかった。「会話もしない引きこもりのままだったら味わえなかった」。仲間の支援で走る楽しさに目覚める。マラソン経験者も多くいる恵まれた環境もあって今回出場を決めた。仲間が伴走用ロープを手作りし、決意を後押ししてくれた。

 大会では、道路を走るのは初めての体験だったが約45分で駆け抜けた。沿道で応援した光枝さんと握手も交わせた。秋山さんは「明るく話せるようになったのは家内のおかげ。ただ、感謝の言葉を直接言うのは照れくさくて」とはにかむ。完走後に家族や伴走者らと記念撮影した際、秋山さんは光枝さんの肩に手をやった。これからも人生を前向きに走り続けるから見守って…。そんな思いが込められていた。

=2018/11/12付 西日本新聞夕刊=

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