吹奏楽が盛んな福岡で生まれた「天神クラシック」 [福岡県]

街角に漂う音楽に触れて立ち止まり、高校生吹奏楽部員たちの演奏に聴き入る市民ら=11月中旬、福岡市・天神(撮影・木村貴之)
街角に漂う音楽に触れて立ち止まり、高校生吹奏楽部員たちの演奏に聴き入る市民ら=11月中旬、福岡市・天神(撮影・木村貴之)
写真を見る
福岡市・天神の街角で「天神CLASSIC」のロゴが入った黄色のTシャツに身を包み、楽しそうに管楽器を演奏する高校吹奏楽部員
福岡市・天神の街角で「天神CLASSIC」のロゴが入った黄色のTシャツに身を包み、楽しそうに管楽器を演奏する高校吹奏楽部員
写真を見る
「天神クラシック」でアドバイザーを務め、出演者らに演奏指導していた織田浩司さん(右)=福岡市・天神
「天神クラシック」でアドバイザーを務め、出演者らに演奏指導していた織田浩司さん(右)=福岡市・天神
写真を見る

 11月中旬の週末、福岡市・天神の街角を歩いていると、心地よい音楽が耳に触れ、ふと足が止まった。デパート前広場の片隅の小ステージで、高校生らしき若い男女5人がクラリネットなどの管楽器を演奏。周りには既に人垣ができ、彼らの演奏に聴き入った。

 「天神クラシック」という名で今年始まったばかりのイベントだった。福岡県内の吹奏楽愛好家に参加を呼び掛け、天神の街角で生演奏をしてもらう企画。今年は高校吹奏楽部や市民楽団など約20団体・総勢約150人が参加し、デパートなど商業施設3会場で2日間にわたり、クラシックやジャズなど30分前後のミニコンサートを披露した。

 企画の趣旨が面白い。関係者いわく。「福岡は全国屈指で吹奏楽が盛んな県。商業施設が集積する天神での演奏は貴重な発表の場になり、幅広い世代の買い物客にとっても耳心地の良いアコースティックな音色は癒やしのBGMになる」

 では、福岡の吹奏楽はどのくらい盛んなのだろうか。シンフォニーホールがある天神の複合施設「アクロス福岡」に聞くと、こんな答えが返ってきた。「数値的なデータは持ち合わせないが、参考になるのは全日本吹奏楽コンクールの出場団体。中学、高校、大学、職場・一般の全4部門で、福岡の団体は毎年のように九州代表で出場している。こんな地域は全国的に珍しいでしょう」

 コンクールを主催する全日本吹奏楽連盟(東京)のホームページで10月にあった今年の全国大会結果を調べると―。中学の部は姪浜(金賞)と城南(銀賞)▽高校は精華女子と福岡工大城東(ともに金賞)▽大学は福岡工業大吹奏楽団(銀賞)▽職場・一般はブリヂストン吹奏楽団久留米(金賞)、西区市民吹奏楽団(銀賞)、春日市民吹奏楽団(銀賞)と、福岡から計8団体が出場、しかも優秀な成績を収めていた。出場団体数は、トップの埼玉(9団体)に次いで全国2位だった。

 ではなぜ盛んなのか。アクロス福岡は「環境に尽きるでしょう」と即答する。まずは福岡を本拠地に、創立65年の歴史を誇るプロ・オーケストラ「九州交響楽団」(九響)の存在。そしてアクロス福岡やマリンメッセ福岡、福岡市民会館など演奏ホールも身近にあり、吹奏楽に触れる環境は充実している。

 福岡に愛好家はどれくらいいるのか。「学生時代の経験者を含めれば数十万人に達するのでは」と関係者。経験者の掘り起こしも狙いとか。「吹奏楽で奏でるクラシックやジャズは幅広い年代に届き、いくつになっても楽しめる音楽であることを思い出してほしい」

 心強い助っ人もいる。「BIG HORNS BEE(ビッグ・ホーンズ・ビー、略称・BHB)」の織田(おりた)浩司さん。人気バンド「米米CLUB」のホーンセクションとして1980年代から活動し、ディープ・パープルやB・Bキングらの日本公演にも参加するなど幅広く活躍しているブラスバンドのサクソフォン奏者だ。イベントではアドバイザーを務め、本番前の出演者らに演奏を指導し、時にはステージで競演。この日、デパート前広場ではジャズ名曲「A列車で行こう」を高校吹奏楽部員らと披露した。

 そんな織田さんが後日、西日本新聞の取材にこんなメッセージを寄せてくれた。「天神クラシックは、市民に愛される音楽で天神の街角を包み込むイベント。市民の皆さんが主役です。幅広い世代の方々に参加していただき、音楽の街・福岡がさらに盛り上がるひとときになればいいなと思います」

 市民や地域への温かな眼差しを感じさせ、主催側の思いも十分汲(く)み取るメッセージ。福岡の音楽イベントとしては後発かもしれないが、ロックやポップスがあふれる「ミュージックシティ天神」、プロ・アマが競演する「中洲ジャズ」に続き、音楽都市の新たな風物詩として定着しそうな予感がする。

=2018/11/26 西日本新聞=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]