海底の米軍艦「物言わぬ語り部」に 沖縄戦で特攻受けて沈没 九大で活用考えるシンポ [福岡県]

エモンズの活用について語る専門家たち
エモンズの活用について語る専門家たち
写真を見る

 太平洋戦争末期の沖縄戦で、旧日本軍の特攻攻撃を受けて沈められた米軍艦「エモンズ」の保存や活用を考えるシンポジウムが12日、福岡市西区の九州大伊都キャンパスで開かれた。九大教授や共同研究者らが最新技術による研究の成果と意義を発表し、学生や市民ら400人以上が耳を傾けた。

 1941(昭和16)年、米駆逐艦として進水したエモンズは全長約106メートル、排水量2050トン。後に高速掃海艦に改装された。45年4月に沖縄沖で任務中、旧日本軍の特攻機5機の攻撃を受け航行不能になり、翌日、米軍僚艦によって沈められた。2000年になり、沖縄・古宇利島沖の水深約40メートル地点で発見され、船体付近に特攻機のエンジンも確認されたという。

 九大浅海底フロンティア研究センターは14年から、水中写真と超音波を組み合わせてエモンズを測量。昨年6月までに、詳細な海底地形図と船体の3次元画像を作成した。

 この日のシンポジウムでは、センター長の菅浩伸・主幹教授が「視界が利かない海中にある船体の全体像が分かった」と成果を報告。京都市埋蔵文化財研究所の吉崎伸さんは、水中写真と3次元画像を米国側の戦闘詳報と照らし合わせた結果、「破損箇所が一致しており、米側の史料がほぼ正しかったことを確認できた」と話した。

 大阪府文化財保護課の中西裕見子さんは、旧日本軍の真珠湾攻撃で沈んだ米戦艦アリゾナの保管事例を紹介。「アリゾナもエモンズもその場所に沈んでいるから価値がある」とした上で、「船体は海中で日々朽ち果てていく。後世に伝えるには詳細で正確な情報を記録することが大切」と強調した。

 沖縄戦について解説した沖縄県立埋蔵文化財センターの片桐千亜紀さんは「エモンズ(への攻撃)は特攻成功の稀な事例。戦争体験者が年々少なくなる中、『物言わぬ語り部』として重要な存在になる」。歴史学に詳しい九大のマシュー・オーガスティン准教授は「(日米で)立場が違えば歴史の語り方も変わるが、複数の円の重なり合った部分が真実に最も近い。エモンズはその役割を担える」とし、平和教育への活用を期待した。

=2019/01/16付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]