3・11後、再生エネが導く生き方 映画「おだやかな革命」 3月4、7日福岡で公開 映像ジャーナリスト野田雅也さんに聞く [福岡県]

小水力発電を提案した石徹白への移住者ら
小水力発電を提案した石徹白への移住者ら
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野田雅也さん
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 東日本大震災後の全国各地で、再生可能エネルギー事業を軸とした地域づくりに挑む人たちを追うドキュメンタリー映画「おだやかな革命」(渡辺智史監督)が3月4、7日、福岡市中央区のKBCシネマで公開される。現場を知る映像ジャーナリスト・野田雅也さん(福岡県久留米市出身)に見どころを聞いた。

 福島第1原発事故で全村避難となった福島県飯舘村。映画は、避難指示解除後は村に戻ると決めた畜産家の語りから始まる。

 村民の出資で「飯舘電力」を立ち上げた。すぐに畜産を再開するのは放射能汚染で無理なので、突破口に太陽光発電を選んだ。「未来への財産」にもなる。汚染土という負の遺産だけあるようでは残念だ-。

 震災前には約6千人が暮らした、畜産と農業の村。一昨年春の指示解除後、避難先から戻ったのは900人ほどにとどまっている。学校は再開したが、ほとんどは避難先の村外から通う。

 村再生への道のりは遠く思えるが、飯舘電力はこれまでに小規模太陽光発電施設を43基設け、1億円に迫る売電収入を上げるようになった。太陽光パネルの下で、牧草を育てる試みもあり、「飯舘牛」復活の夢も捨てていない。「飯舘は生まれ育ち、長年農業をしてきた土地。震災前の状態には100%は戻らないが、チャレンジしていくしかない」。淡々と語る畜産家の目の奥に力強さがのぞく。

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 東日本大震災は、それまで確かだと信じられてきた都市型の社会・経済体系を一瞬にして揺るがし、本当の豊かさとは何かという問いを人々に突き付けた。生き方を変え、「移住」を選んだ人もいた。映画は、伝来の農業用水路を活用し住民出資で小水力発電を始めた、岐阜県郡上市の石徹白(いとしろ)地区を紹介する。この事業の提案者が、都会から移住した若者だった。カメラは新旧住民の今と思いを丹念に追っていく。

 石徹白地区は外部資本に頼らず、地域自らエネルギーを自給し、その利益を地域内で循環させる自立経済を一歩一歩、実現していっている。小水力発電の売電収入は耕作放棄地の営農などに役立て、農産物加工場も再開し、若者が働ける場所ができた。移住の流れも続き、若い新住民は地域のお年寄りに伝統着の話を聞いて復活させたり、高齢者向け買い物バスの運行やカフェを始めたり、それぞれがやりたいことで経済的に自立し、村人たちを元気づける。

 映画はこの他にも、福島県喜多方市の酒造会社の当主が震災後に立ち上げた「会津電力」や、秋田県にかほ市の住民と交流しつつ風力発電に取り組む首都圏の「生活クラブ生協」、間伐材の燃料化など森を生かした村づくりに取り組む岡山県西粟倉村を取り上げる。

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 スクリーンに映る一人一人の表情に、プライドや自信がある。どの事例も、大切なことを大切にできている地域であり、試みだと感じられる。「エレガント・シンプリシティー(elegant simplicity)」という英単語を、文化人類学者の辻信一さんが提言する。「本当のエレガンス、すてきで美しい暮らし方はシンプルさの中にある。自分が楽しいか、自分は幸せか…」。そうした「生き方革命」が地域で起きていることを、この映画は伝えてくれる。 (談)

 のだ・まさや 1974年、福岡県久留米市生まれ。映像ジャーナリスト、写真家。共同監督作ドキュメンタリー「遺言-原発さえなければ」など。

=2019/02/20付 西日本新聞朝刊=

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