検証高島流11・18福岡市長選(下) 発信抜群「実」はいかに ワンフレーズ政策次々

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 8月上旬、16カ国32都市の首長らが2日間にわたり福岡市に一堂に会した「アジア太平洋都市サミット」。福岡市長・高島宗一郎は精力的に会議と会談をはしごし、歓迎レセプションでは博多織の着物姿で登場、「フクオカ」を海外にアピールした。そして最終日、満場一致の拍手で採択された「福岡宣言」。3番目の項目は「人と環境と都市活力の調和が取れた都市づくり」-。高島が最初の市長選から一貫して掲げてきたスローガンを、世界に発信することに成功した。

 高島にとって発信力は最大の武器だ。2年前のJR博多駅前の道路陥没事故。「就任以来のピンチ」(関係者)に際しても有効に使った。フェイスブックで復旧作業の進展を連日発信。7日間で巨大な穴を埋め戻し、海外メディアから称賛を浴びた。市発注の地下鉄延伸事業が事故現場だったが、責任の所在は曖昧なまま収束していった。

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 都心再開発の「天神ビッグバン」、九大箱崎跡地の再開発「福岡スマートイースト」、街を花で彩る「一人一花」…。高島は印象的なワンフレーズを矢継ぎ早に打ち上げ、雰囲気と期待値を先行させ政策推進力としてきた。「福岡市が地方最強の都市になった理由」の著者木下斉(ひとし)は「福岡の元気さは、市長の情報発信力によるところが大きい」と分析する。

 一方で、どこまで「実」が伴っているのか見えにくい施策もある。例えば、博多港中央、博多ふ頭を再整備する「ウオーターフロント(WF)ネクスト」。2年前、市は民間に施設の一体的な運営権を与える「コンセッション方式」を導入する方針を打ち出したが、動きは鈍い。ロープウエー構想も前提は20年後にWFへの人の往来が現在の3倍、約16万人に増えるという予測。ある市OBは「市長の『私の夢』が独り歩きしている。民間が本当に手を挙げるのか」と語る。

 広報戦略を重視する高島が、情報を発信しないこともある。飲酒運転3児死亡事故から12年となる8月25日、市役所前であった撲滅大会。主催者としてマイクを握り、「取り組みの先頭に立つ」と誓ったが、約3カ月前に市の部長級職員が飲酒運転で摘発された件には触れなかった。

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 人口増加数が全国の20政令市で1位、市税収入も5年連続過去最高を更新した福岡市。かつて高島が社会人学生だった頃、指導教官を務めた九州大大学院法学研究院教授の出水薫(政治学)は成長する今だからこそ、将来への備えを求める。「市長はキャッチフレーズだけでなく、超高齢化の到来と外国人定住を巡る重たい宿題を見据え、行政が本来やるべき分析と検証に早急に着手すべきだ」

 高島は現在、初めての自著を世に出す準備を進めている。昨年来、政治家を志した思いなどをつづってきた。まだ白紙とみられる最後のページ。どんなメッセージを発信するのか。出版は12月を予定している。 (敬称略)

=2018/09/19付 西日本新聞朝刊=

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