【たっぷり福岡市長選】「市民にかけられた魔法を解きたい」共産党が推薦、神谷氏が主張した福祉や経済論

記者会見で高島宗一郎氏に公開討論を呼び掛ける神谷貴行氏
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 11月4日告示、18日投開票の福岡市長選で、共産党市議団事務局長の神谷貴行氏(48)が10月5日、記者会見を開き、無所属で立候補を表明した。共産党福岡県委員会は神谷氏の推薦を決めた。

 市長選で福岡市民の皆さんに投票の判断材料としてもらうために、神谷氏が選挙公約や現職の高島宗一郎市長との違いについて主張した会見を詳しくお伝えする。(三重野諭)

高島市長が3選出馬会見で語った「都市論」「チャレンジャー首長」記事はこちら

 神谷氏:なぜ高島市長に代わって、新しい市政をつくらなきゃいけないのか。きょうも市議会を傍聴したら、議員の中に「高島さんで福岡が元気になった」「経済は成長している」という事をおっしゃる方がたくさんいらっしゃったな、という印象だった。

 だけど、間違いなく経済成長はしたけれども、その果実は一部の人間にしか行っていない。市民が貧しくなっている。

 高島さんの売りは、都市の成長と生活の質の向上の好循環という話だったはず。好循環してるという話なんですけど、出てくる話は全部「成長している」「企業はもうかっている」という話ばっかり。生活の質の向上はどこへいったんですか。市民は貧しくなったままじゃないんですかっていうのが、最大の高島市政の問題だと思っているんです。

 市が出しているデータで、市民経済計算というのがあります。実際に数字でもうかっているのは民間の法人、企業、大手企業を中心とした所だけです。(所得が2009年度から15年度で)1・64倍になっています。

 市内にある大企業の内部留保も1兆円増えているんです。ところが、市民の家計の可処分所得を調べてみると、下がってるんですよ、全然、果実が来てないんですよね。

 高島市政は完全に失敗していると思うんです。成長と分配が必要なのに、いびつな成長だけしている。すっごい古くさいトリクルダウンなんです。今時、こんな政治やってんのって思うぐらい。新しい時代の政治をしないと駄目だと思ったわけです。

 高島さんの時代になってから、低所得世帯が増えて、市内の半分になっちゃってます。単身世帯も半分ぐらいになっています。で、彼は短期でも長期でも、そこに何の手立てもない。大変なことになっちゃう。

 彼は(福岡を)「シアトルみたいな街にしたい」と言っていたでしょう? 今シアトルってアマゾンの本社があって、他方でホームレスがいる社会になっちゃってます。そんな風になっちゃうかもしれない。

◆「住宅補助は全ての階層に行き渡る施策」

 1%のためじゃなくて、99%のための政治をしないと、これは間に合わないよっていうのが、私が立候補を決意した一番大事な点です。その上で、公約と争点をお話しします。

 ポイントだけ示したいと思います。これは第1次です。皆さんから意見を聞いて、いろいろ補強していきたいと思います。三つ争点があると思ってます。一つは経済。どうやったら市民に果実が回るのか。市政の知恵としてどうやっていくか。

 例えば子育て階層だけとかお年寄り階層だけじゃなくて、全ての階層に効く施策として考えやすいのは家賃補助。それか、市が民間の住宅を借り上げることも含めて、市営住宅を増やしていく。住居費を、固定費を削減するのが一番効くと思います。

 ちょっと節約するという時は、食費とか、衣服費を節約するでしょう。だけど、「きょう頑張って今月の家賃を1万円下げようか」というわけにはいかない。それが下がれば暮らしが相当楽になるわけです。だから、家賃補助と市営住宅の増設は大事だと思っています。

 高島さんは、家賃補助を今のところやるとは言ってないです。ただ、市の審議会を見ていると、セーフティーネットの登録住宅でやるのかなっていう話をちょっとしてるんですけど、登録ゼロです。誰も手を挙げないから、事実上やっていかないです。むしろ市営住宅は減らしていて、今後も増やすつもりもない。

 長期的に見ると、これからAIとかITとかIoTが発達してくると、それをもうけ本意に使うと失業が起きたり、就職できない人が出てきたりするじゃないですか。自動運転の車ができたときに運転手さんが失業するとか、そういう事態ってあり得ると思うんです。

 そういう時に、健康で文化的な最低限度の生活の所得を保障する、ベーシックインカムって注目を集めてますよね。大事な社会保障のやり方と思ってるんです。ただ、財源とかいろんな課題があるので、すぐにはできないと思っているんです。私の周辺でも社会保障の専門家の中には「ベーシックインカムよりも今ある社会保障を充実させてほしい」という意見もあって、割れている問題があるんです。

 家賃補助をすれば、全ての階層に行き渡る社会保障にもなるし、同時に、それを延長してお金持ちの人も含めて住宅手当で住宅をまかなっていく社会に変わっていったら、ベーシックインカムのベースになってくる。今ある社会保障を充実させて、将来的にベーシックインカムにバトンタッチできるようなものを目指していきたい。

◆「ロープウエー構想を争点に」

 合わせて、中小企業。中でも小規模企業の仕事と雇用を増やしていく。地域の中でお金がぐるぐる回る仕組みをもうちょっと考えなきゃいけない。

 例えば今だって、観光はどんどん人が来るけれども、地元の商店とかには全く来ないって話になってる。だから、お金がちゃんと地域で回るようにした方がいい。人工島事業みたいな事業発注をすると、ほとんど地域以外の大手にしか行かないんです。

 だけど、学校改修みたいな身近な公共事業をやると、90%ぐらいが地元の小規模企業に回ってくる。こういう公共事業を一生懸命やるように切り換えていく事で、地域にお金が回る、雇用を増やす事になっていくんじゃないかと思います。

 特に防災の生活密着型の公共事業をやりたい。通学路にある危険ブロック塀が800カ所ぐらいあるけれども、ゼロにしたい。補助を増やすだけじゃなく、責任を持ってやりたい。

 それと、災害時に一番困ってるのは、水道とかライフラインの問題ですから。水道管の耐震化ってまだ、6割ぐらいしかやってない。スピードアップさせてやる。

 高島さんのやり方、大型開発や規制緩和一辺倒でやっていくやり方じゃもう、ちょっとまずい。いびつな成長だけじゃ駄目。成長と分配、どっちもやるって切りかえていかなきゃ。

 その象徴がロープウエー構想です。きょうの議会を見ていると、400億円かかるかもしれないという話が出てる。ロープウエーをやりたい人は高島さん。見直した方が良いっていう方は私、という争点を設定したい。

◆「配る福祉か、支えさせる福祉か」

 争点の二つ目は福祉の在り方、社会保障の在り方を問うていきたい。高島さんは「税金で解決するのはもう古い、配る福祉から支える福祉へ」と。私から言わせれば予算を配る福祉をやめて、町内会やボランティアに支えさせる福祉に変えるって事でしょうと。高齢者乗車券廃止を検討し始めて、無くす代わりにポイントをあげましょう。ポイントは、町内会やボランティアやってる人だけ。「やりなさい」ってポイントで釣るやり方です。

 それか、移動支援のバスを、全部事故のリスクを負って町内会でやってくださいと。そういうスタイルを目指しているわけでしょう。こんなもんやったら、地域がパンクします。市がコミュニティーにどういう依頼をしているか。私が町内会長やっていたちょっと古い時代ですが、年に1000件ありました。1000件も依頼があると、町内会の担い手がどんどん少なくなっていく、負担に押し潰されてますます担い手が減っていく。地域も潰す、社会保障も潰すっていうやり方を高島さん続けていったら、大変なことになる。

 なので、争点の二つ目は福祉。予算をちゃんと配る福祉か、ボランティアか町内会に支えさせる福祉か、どっちを選びますか。その象徴が高齢者乗車券です。拡充してほしい、削減しないでほしいという4万筆の署名が集まりました。高齢者乗車券、廃止削減したいという方は高島さん。拡充したいという方は私。争点にしたい。

 争点の三つ目は、安倍(晋三)さん流の政治の流れを続けるのかどうか。

 沖縄県知事選では安倍さんの支援した候補が負けました。もちろん新基地の建設が問われたんですけど、同時に安倍さんみたいな政治のやり方がいいのか問われたと思うんです。

 沖縄だけじゃない。自民党総裁選。自民党の支持者の中でも、石破(茂)さんの方がいいという人、安倍さんじゃない人がいいというのは45(%)まで迫ったでしょう。社会全体、こういうマグマがたまっちゃっている感じになっていると思うんです。

 安倍さんべったりの高島さんですから。そして麻生(太郎)さん、安倍さんの流れですからね。安倍さん流のトリクルダウンが良いのか。見直すのか。安倍さんが良い方は高島さん。切り替えた方が良いという方は私に、という感じになる。

◆公開討論ぜひやりたい

 マスコミの皆さんにお願いしたいんです。公開討論をぜひ高島さんとやりたい。1対1でやりたいので、受けてほしい。アメリカの大統領選挙みたいに、ちょっと入り乱れてやるみたいな。

 多分、高島さんの方が経験や知恵もあるし、ベテランだと思うんで、ちょっと私の方が不利かもしれませんけども、ぜひやりたい。市民の皆さんにいろんな形の争点が見えてくるでしょう。高島さんが見ているかどうか分かりませんけれども、見ていたらぜひ受けてほしい。

 (以下、記者と質疑応答)

-公約は給付が多い印象。どう財源を確保するのか-

 基本的に大型開発の中で無駄なものが多いと思ってますので。例えば人工島事業、年100億円入っているんです。ウオーターフロントは数千億円かかるかもしれないと言われている。無駄なものを計画的に精査していけば、全く問題ないと思っています。

 それと、例えば市長になってから1年目2年目、すぐにお金が必要になる時は財政調整基金も活用していく事を考えていきたい。

-家賃補助の額の想定は-

 今は全くそのシステムがないので、始める事が大事。特に若年の単身者と高齢の単身者について始めていく。(額は)他の施策とのかかわりで、決まることだと思います。市は4万世帯ぐらいを経済的に支援しなきゃいけない世帯として考えており、その世帯を10年ぐらいで解消していくという計画を持ってるんです。それに見合う分を1年ぐらいで。家賃補助とか民間住宅の借り上げとかで解消していけたらいいなって。市長になって、財政当局と相談しながらやっていくと思います。

-若年の単身者というのは、非正規雇用のイメージか-

 正規で働いている人は、会社から住宅手当が出ている所もあったりする。一番困っているのは、若年の非正規のような方だと思う。そういうところに焦点を当てた制度をスタートさせていくのがいいかなと思います。

 実は、高島市政は今、保育士の家賃補助を部分的にやっているんです。だけど3年という期限ですし、正規の方にしか出してない。非正規の方に施策が届くといいなと思います。

-福岡市の待機児童の問題をどう捉えているか-

 高島さんになってから待機児童が減ったという話をされているが、実態的には「隠れ待機児童」と言っている未入所児童は逆に増えている。今年ちょっとだけ減りましたけど、過去最悪のレベルで推移していると思うんです。

 抜本的に、認可保育園の新築が足りないと思っています。合わせて保育士の給与。全平均に比べると10万円ぐらい低いという事ですから。思い切って引き上げるのを、市の独自の政策としてやってくのが必要になる。小手先の事だけやっていると、本当の意味での待機児童解消はできないというのが私の実感です。

◆「陥没事故、高島市長の責任でしょ」

-選挙で戦う相手として、高島さんをどう見ているか-

 アナウンサー出身で、市長で2期8年の経験を積んでいらっしゃるので、なかなか手ごわい方だなと思います。だけど、私の話を聞いて「魔法が解けた」っておっしゃった方がいたんですね。

 要するに(高島市政の)経済好調、実績抜群って思われてた人が、実際市民が全然潤ってないということがクリアに分かったので、「すっきりした」っていう方がいらっしゃった。何か(市民が)魔法にかけられてるとこがあるんじゃないかと。

 (2016年、JR博多駅前の)陥没事故のときも、どう考えても高島市長の責任でしょと思ったんですけれども、急にすごく早く直してヒーローみたいになっているっていうのは、魔法にかけられたんじゃないかって思ったんです。そういう魔法を解いていく作業っていうは、楽しみだし、やりがいがあると思います。

-選挙への立候補経験はあるか-
 
 1度もありません。

◆「自民党支持者にも、創価学会の方にも支持していただきたい」

-選挙を戦うにあたっての戦術は-

 今の経済政策、高島さんの特に経済のやり方に対して、自分の所は全然(潤っている)実感無いよっていうのは、保守の方も、色んな方も含めての声だと思うんです。普段は保守的な言動や支持をされている方も、その点では一致されるという方が結構多いと思っています。

 具体的な政策で、皆さんが感じている事で、党派の垣根を越えていきたい。私は出身母体が共産党です。一党一派の人だろうと、どうしても見られがちになると思うんです。もちろん、高島市政と対決してきたのはやっぱり共産党ですから、私が候補者として選ばれたってのは、とても自然なことだという気持ちはあるんですよ。

 同時に、私は一党一派の代表じゃなくて、広範な市民の代表ですよ、と。政策とか、公約を見ていただいて、自民党を支持している方にも、創価学会の方にも、旧民主党の人たちにも支持していただきたい。公約や政策の中身で知らせていきたい。

-共産党福岡市議団の事務局長は辞職するのか。辞めずに選挙に出るのか-

 今の見通しでは、辞職して出るという形は取らないと思います。

◆プライベートで漫画評論

-気分転換の方法は-

 プライベートで漫画評論をやっているので、家で漫画と本を読んだり、評論を書いたりすると、とてもリフレッシュします。家族で周りを散策するのも好きです。個人的に今は筋トレにはまっているので、何にも考えずにできるってのが、良いなと思ってます。

-最も尊敬する人物は-

 注目している地方政治家が3人いて、1人は、(前)熊本県知事の潮谷義子さん。自公の推薦候補ですけれども、彼女がやった川辺川ダムの住民討論集会っていうのは、なかなかすごい住民自治の原点のやり方をしてると思いました。

 もう1人は亡くなった沖縄県知事の翁長(雄志)さん。自民党出身でも、やっぱり一党一派の代表じゃないわけです。「イデオロギーよりアイデンティティー」って言って、保守と革新を糾合しちゃった。高島さんみたいに、1%のためにエッジかけたことやってればついてくるだろう、というのとは全然違うタイプ政治家じゃないのか、と思っています。

 3人目が蜷川虎三さん。「地方自治の灯台」っていわれた人で、吉田内閣の出身なんですよ。保守の流れも入ってて、共産党だって対抗馬を立てたことがある人ですけども、彼が結局キャラクターを超えて愛されたっていうのは、新しい地方政治の流れを作ってきたからです。

 きょう、高島さんが地方議会で注目されているという話があったけど、それは安倍政権のお先棒を担いでるから注目されているのであって、蜷川さんがやったことはそれと違う政治文化を創り出していたこと。なかなか偉いことだったと思う。そういうことを私もやりたい。

 最後に、実在してないキャラクターです。「神聖喜劇」っていう大西巨人さんの小説があって、漫画にもなってるんです。東堂太郎っていう人がいるんですけど、彼は軍隊の中で最初、自分はとにかく死んでも良いと思ってるけども、だんだん軍隊で非人間的なものを体験する中で、それに立ち向かっていくっていうキャラクターです。私すごい好きですね。毎日朗読してる小説なんですよ、声上げて。それぐらい好きなキャラクターですし、そういうふうに生きられたらすごくいいなって思ってます。

-町内会組織について、経験から考える課題は-

 市内で町内会長をやっていたのは2009年か10年から5年間くらい。町内会の仕事は大事だと思っているんですけど、今、町内会が困っているのは、いろんな形でやらないといけない仕事を押しつけられ、あるいは抱えてしまっていて身動きが取れない。人がなかなか近づいてこない、担い手がいなくなって身動きがとれない。昔の戦争の時代から作られていた町内会の「行政の末端」という感覚が残っているんです。行政に下請けに使う感覚が残っている。

 だけど、町内会は住民に何か責任をとる組織ではない。やらない施策もやる施策もあるが、基本は住民が親睦を持ってお隣さん意識でやる。それさえあれば何でもできるというのが、私の主張なんです。

 町内会でいつもお祭りの時に会計してくれるおばあちゃんが、預金通帳を持ってウロウロし始めたので、心配していたらとうとう(家の)電気が消えちゃって、いなくなったっていうのがあって。

 ずっと探し回ったら、結局息子さんのおうちに行っていたというのが分かったが、別にポイントが欲しいから探し回ったんじゃないんですよね。いつも親しくしている人だから「大丈夫かな」ということなんですよ。

 ちょっとしたお祭りできっかけづくりができればそれでいいじゃないですか。それさえあれば町内会は生き残っていける。身軽に考えて、仕事をリストラしたらどうですか、と。行政が下請けさせては駄目ですよと。市長になるとしたら、町内会を下請けみたいに見たり使ったりしたら駄目だと考えています。

-目指す福岡市の都市像は-

 「1%のためでなくて99%のための政治」というのが私のスローガンです。基本的には住みやすいというのがベースになって、成長していける際のベースにもなると思っている。

 高島さんのやり方は、企業側ばっかりを活性化すれば全体がついてくるだろうと思っているかもしれません。生活が安定したり、暮らしが良くなったりするということを、政治の責任でやっていくと、民間は安心していろんな活動をしていける。

 福岡は官の力じゃなくて、民間が自由な気持ちでやっていくっていう気風があると思う。その際に政治が何をするか。私の言い方ですけれども、大手企業と癒着して便宜を図ってやるということが政治のやってあげることじゃない。

 市民の消費とか所得をきちんと安定させることで、民間企業は大手も含めて、自由に活力を持って、やってもらえる。高島さんの考えは逆立ちしていると思っています。

-立候補を決断して、家族の反応は-

 (妻は)話をしたら「それはなかなか面白いね、頑張れ」と。娘も最初は「ふーん」という感じだったんですけども、記事とかいろいろ見せたりする中で、ちょっと面白そうな顔はしていました。おおむね、応援してくれているという感じでした。

=2018/10/07 西日本新聞=

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