福岡市長選リポート<博多区>加速する「旧市街」づくり インバウンド急増 対策も必要

「博多旧市街」と記されたのぼり旗が翻る承天寺通り。奥は「博多千年門」。
「博多旧市街」と記されたのぼり旗が翻る承天寺通り。奥は「博多千年門」。
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 「あれ? 去年とイベントの名前が違うね」。カラフルな照明に街が彩られた「博多旧市街ライトアップウォーク2018千年煌夜(こうや)」。福岡市長選告示日の夜まで開かれたイベント会場のあちこちでささやきが漏れた。昨年12月、市が打ち出した「博多旧市街プロジェクト」の実質的な“元年”。博多区内のイベントの多くに「旧市街」の文字が追加され、通りや観光施設にはのぼり旗が翻る。

 プロジェクトは、御供所、冷泉、大浜、奈良屋の4地区で構成される博多部を「旧市街」と位置づけ、博多祇園山笠が奉納される櫛田神社や博多織発祥地の承天寺(じょうてんじ)など地域の歴史的な資源を観光振興に結びつけようというもの。

 イベント名変更だけでなく、御供所通りを石畳風に舗装したり、出来町公園をバス駐車場も備えた観光拠点にリニューアルしたり、回遊性を高めるハード面の整備も進行中。呼応するように、同公園の近くで和の景観に配慮した大型オフィスビルの建設が始まるなど「旧市街」を意識した街づくりが官民で加速する。

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 当初「俺たちの街が何でオールドタウンか」と反発した住民も、今では「地域が良くなるのなら」と好意的な受け止めが増えた。街づくり団体「博多の魅力発信会議」の冨田勝久議長(66)は「地域づくりにはプラス材料。これまで博多部で市の事業があると『何で博多にばかり』と批判されたが、『旧市街』の大義名分ができて動きやすくなった」と歓迎する。

 ただ、プロジェクトのメインターゲットの一つである訪日外国人客(インバウンド)の急増には住民から戸惑いの声も上がる。

 「ものを食べながら来店した外国人客が買いもしないのに、商品を開封し、食べ物で汚れた手で触りまくる」と怒り心頭なのは、櫛田神社の近くで箸店を営む小島祥展(よしのぶ)さん(47)。店内には「飲食禁止」「ぬれた手で触らない」など複数言語の警告文が張られているが、効果は薄いという。

 つい最近、店の前の路上で土産物を広げて分配していた外国人女性らが、不要になった包装紙などを自販機横の空き缶入れに突っ込んで帰ったことも。「吸い殻が捨てられるなど日常茶飯事です」

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 老朽化したビル群の建て替えラッシュが「天神ビッグバン」なら、「博多旧市街」は都市のアイデンティティーづくり。博多祇園山笠や博多松囃子(まつばやし)など古い祭り文化が今も息づく博多部への施策の集中は、単なる「ミニ東京化」にあらがう動きにほかならない。

 「上手に使えばこれ以上ない武器をいただいた。利用しない手はない」(冨田議長)と勢いづく街づくり関係者。「デメリットを気にするよりもメリットを伸ばすことが大切だ」としてプロジェクトを地域振興の好機ととらえる声が多勢だが、怒涛(どとう)の勢いで流れ込むインバウンド客に街が消化不良を起こしている面も否定できない。

 「最低限のマナーを知らせるため、観光客向けの『ルールブック』が必要では」と訴える小島さん。「旧市街」の主役である住民が心からの「おもてなし」ができるための環境づくりも問われている。

=2018/11/11付 西日本新聞朝刊=

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