森へおいでよ 筑豊の自然再発見<34>コケと野鳥 巣が示す豊かな自然

(1)コケをとるミソサザイ(豊前坊・高住神社境内)
(1)コケをとるミソサザイ(豊前坊・高住神社境内)
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(2)ミソサザイの巣。巣材として6種の蘚類が使われている。多い種から、アオシノブゴケ、ヒメコクサゴケ、フジハイゴケ、キダチヒラゴケ、コクシノハゴケ、トサカホウオウゴケ
(2)ミソサザイの巣。巣材として6種の蘚類が使われている。多い種から、アオシノブゴケ、ヒメコクサゴケ、フジハイゴケ、キダチヒラゴケ、コクシノハゴケ、トサカホウオウゴケ
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(3)ほふく性のコケ(ハイゴケ類)=イラスト・木村直喜
(3)ほふく性のコケ(ハイゴケ類)=イラスト・木村直喜
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 英彦山の豊前坊、高住神社(添田町)周辺は、ちょうど今ごろの新緑の時期になると野鳥のさえずりでにぎやかである。

 その主役はミソサザイ=写真(1)。全長(くちばしの先から尾の先まで)10センチメートルほどの日本で最も小さい鳥の一つである。からだは小さくても豊前坊のソリストにふさわしく、石灯籠の上のステージにひょいと上り、短い尾をピンと立て、全身全霊を注いで、体を振り絞って歌い上げる。

 ミソサザイは、毎年高住神社の境内に巣をかけているようで、筆者も2年前、石灯籠の火袋の中に巣材を運んでいるのを観察したことがある。

 今から8年ほど前には、英彦山でコケの調査をしていた筆者の妻が、高住神社の厚意で境内にかけてあったミソサザイの巣をもらった。野鳥(特に小鳥)の巣は寝泊まりするところではなく、人間でいうとベビーベッドのようなもので、子育てが終わると利用しなくなるのである。この巣は3、4羽の個体が無事巣立った後のもので、傷んだところも特になかった。筆者も現物を触ったが、ふかふかしていてひなはさぞ快適だったろうと思った。

 妻の師で長年英彦山や香春岳のコケを研究されている崎山欽一郎氏と妻がこの巣を調べた結果、巣の外壁、内側のほとんどがコケ(すべて蘚類(せんるい))でできていることが分かった。大きさは奥行き約10センチメートル、幅約14センチメートル、高さ約10センチメートルのボール型であった。中ほどに小さい出入り口(2×2・5センチメートル)があった=写真(2)。

 巣材として使われていたコケは6種で、ほふく性(地をはう性質)で枝分かれするものがほとんどであった=写真(3)。

 それでは、なぜミソサザイはコケを巣材として選んでいるのであろう。

 コケ、特に蘚類には抗菌性がありカビが生えることがほとんどないからとか、ほふく性の蘚類はくちばしではさんで運びやすい上、やわらかいので加工しやすいから、などの理由が考えられている。

 あるいは、高住神社周辺は蘚類が特に豊富にあり、容易に探せて集めやすい、というのがミソサザイにとっての一番の理由かもしれない。

【筑豊の自然を楽しむ会(ちくぜんらく)・木村直喜(ザ・バードマン)】


=2017/05/18付 西日本新聞朝刊(筑豊版)=

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