森へおいでよ 筑豊の自然再発見<37>エナガの習性 羽根と巣の謎を解く

(1)落ちていたエナガの巣
(1)落ちていたエナガの巣
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(2)飛び立つエナガ(くちばしが非常に小さく、尾が長い)
(2)飛び立つエナガ(くちばしが非常に小さく、尾が長い)
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(3)餌を運ぶエナガ(一度に何匹もの虫をくわえて巣のひなに運ぶ)
(3)餌を運ぶエナガ(一度に何匹もの虫をくわえて巣のひなに運ぶ)
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 先月、英彦山(添田町)で行われた日本野鳥の会九州・沖縄ブロック大会の探鳥会での出来事である。筆者たちがスギ林を通過しているとき、だれかが、「これ、何の羽根だ?」と声を上げた。声の方を見ると、先がオレンジ色と黒色の模様で、根元が白いふわふわした羽根が数枚落ちていた。「色からするとヤマガラ?」と言う人もいたが、ヤマガラの羽根にしては大きすぎる。少なくともキジバトぐらいの大きさはあるもの、と思われた。

 「これ、鳥の巣じゃない?」。散らばった羽根のそばに袋状のコケのかたまりが落ちていた=写真(1)。中を見ると羽毛がびっしり詰まっていた。羽根はどうやらそこから出たものらしい。「巣が襲われて、中のひなが食べられたのでは?」「いやひなの羽根にしては大きすぎるよ」などと筆者も含めて頭を抱えていた。

 そのとき、後方からさっそうと登場したのが日本野鳥の会主席研究員の安西英明氏であった。「羽根はヤマドリのもので、巣の主はエナガ(=写真(2)(3))ですね」とあっさり言ってのける安西氏。

 よく見ると、散らばっている羽根の多くは、根元にもう一枚の小さい羽根がついている。これを後羽(こうう)といい、キジ科では目立つ。この特徴と周辺にいる可能性とからヤマドリと判断したそうだ。

 一方、巣の主のエナガはコケやクモの糸などを編んで巣をつくり、中に羽根を敷き詰める習性があるという。調査では洗面器2杯分の羽毛が入っていたこともあったそうだ。落ちていた巣の中にはヤマドリの他、アオバト、キジバト、ヤマガラの羽根も入っていた。

 英彦山にはヤマドリを餌とするクマタカが生息しており、クマタカの襲ったヤマドリの羽根をエナガが巣材として集め、巣の中に敷き詰めたのであろう。

 エナガは外側に地衣類を張り付けて巣を完成させるが、それがまだ万全ではない。従って、最後の仕上げの地衣類を張り付けている途中で、ハシブトガラス(英彦山にはハシボソガラスはいない)によって巣を落とされてしまったのではないか、との安西氏の推理であった。名推理に感服した探鳥会であった。

【筑豊の自然を楽しむ会(ちくぜんらく)・木村直喜(ザ・バードマン)】


=2017/06/08付 西日本新聞朝刊(筑豊版)=

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