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【花宗川の詩 八女筑後大木大川】(7)ヒシの実 掘割が育んだ秋の味

膝まで水につかりヒシを収穫する田中月子さん
膝まで水につかりヒシを収穫する田中月子さん
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生のヒシの実とひし茶。用水路脇にはケイトウの花が咲き始めている
生のヒシの実とひし茶。用水路脇にはケイトウの花が咲き始めている
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 午前7時、大木町横溝の「道の駅おおき」近くにあるヒシ栽培田ではもう収穫作業が始まっていた。長靴をはいて膝まで泥につかる田中月子さん(69)のバケツには既にヒシの実がたくさん入っている。ゴツゴツした形が印象的だ。「重労働なんで暑くならないうちに作業を終えないとね」と手を動かし続ける。

 大木町に入った花宗川は人工の水路を流れ、町内に張り巡らされた掘割(クリーク)に農業用水を供給する。町内の掘割は町の面積の約14%を占めており、国内でも最も高い割合という。掘割は多様な水辺の動植物を育てるが、秋を代表する味覚が「ヒシの実」だ。

 かつては掘割に自生しているヒシの実を採っていた。戦前、一時下火となっていたが戦後の食料不足の時代に復活。その後、農家の副収入として続いていたが、2010年に道の駅がオープンすると、秋の味覚として人気商品になり、現在は町のふるさと納税の返礼品としても人気を集める。

 そのヒシだが、最近では水田での栽培も増えている。原因は、外来種のミシシッピアカミミガメによる食害。戦後、ペットとして米国から輸入されたアカミミガメは、飼えなくなって放されたり、逃げ出したりした個体が掘割で野生化。大木でもヒシやハスが深刻な被害を受けている。

 町は野外調査でカメの生息数を、町の人口とほぼ同じ約1万4千匹と推定。昨年から一匹駆除すると200円を交付する制度を設け、地域単位で対策に取り組むが根絶への道は遠い。

 ヒシはゆでたり蒸したりのほか、生でサラダにして食べることができる。田中さんは加工グループの代表をしており、乾燥させた実を「ひし茶」にして販売する。「香りが良くておいしいよ」と胸を張る。

 収穫したばかりのものを買い、ひしご飯にした。20分ほどゆで、包丁で半分に切って殻をむこうとするが硬い…。10個ほどむいたら指先がすっかり痛くなった。さすが忍者が逃げるときにばらまく「まきびし」に使われたほどだ。しかし、むいた実をご飯と一緒に炊き込んで食べると、苦労を忘れるほどのおいしさ。イモやクリに似ているが独特の香りがある。恵みの秋を“ひし”と感じた。

 ▼メモ 生のヒシの実やひし茶は道の駅おおきで販売中。9日午前9時半から「ひし祭り」があり、ひしご飯(1パック200円)などを販売する。道の駅おおき=0944(75)2153。


=2017/10/09付 西日本新聞朝刊=

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