【産業医が診る働き方改革】<13>職場の喫煙、リスク大

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 福岡市のある保険会社は、執務室の隣の小部屋が喫煙室でした。産業医である私は「職場全体がたばこ臭い」と改善策を求めました。

 私たちの実験結果では、ドアの開閉や、喫煙室を出る人の背後にできる空気の流れで煙が漏れ出ること、喫煙者の肺に残る煙が廊下や執務室で吐き出されることが分かっています。つまり喫煙室では受動喫煙は防げないのです。この会社は半年間の協議で喫煙室を撤去しました。

 喫煙対策を徹底する会社も登場しています。横浜市のシステム会社は(1)喫煙のための離席は7分以内として、超えると罰金千円(2)離席中に社外から電話があると、やはり罰金千円(3)喫煙室では私語禁止-などのルールを設けていました。

 7分間の喫煙離席が1日5回あると、年間240日勤務で計140時間、約30万円の賃金が喫煙室で失われます。本人もチームも作業効率が低下。社外からの電話に「離席」が続くと印象が悪くなる上、伝言を残す周囲の非喫煙者に余計な手間が生じます。また、複数の会社が使うオフィスビルの喫煙室では、私語から業務上の秘密が漏れる恐れもあります。こうした理由に基づくルールでしたが、全員が禁煙し、職場の空気も雰囲気も良くなったそうです。

 たばこは労働災害のリスクにもつながります。ある製鉄所で、救急車の出動が必要な事故を起こした人と健康診断での喫煙歴を照合したところ、喫煙者の事故率は非喫煙者より1・49倍高いことが分かりました。

 また、喫煙者はニコチン濃度が下がるといらいらし、充足すると落ち着くという気分の変動を1日に何度も繰り返すため、メンタルヘルスにも悪影響が及びます。東京近郊の2770人の調査では、喫煙者のうつ病リスクは非喫煙者の約2倍です。

 喫煙でアイデアが浮かぶとか、効率アップするという現象は、ニコチン切れで低下した脳の機能(無意識にサボった状態)が元に戻るだけなのです。

 もはや職場の机で喫煙できた時代があったとは信じられませんよね。職場全体が能力を発揮できるよう、さらに喫煙対策を考えてみませんか。

(大和浩=産業医大教授)

=2018/05/14付 西日本新聞朝刊=

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