【産業医が診る働き方改革】<14>呼気からの「三次喫煙」

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 喫煙者が吐き出す煙を吸わされる受動喫煙(二次喫煙)の弊害は定着しました。最近、別の場所で喫煙した人の呼気や衣服からのたばこ臭が話題になっています。厚生労働省は「残留たばこ成分」と定義し、医学的には「三次喫煙」という用語が使われています。

 4月、奈良県生駒市は喫煙後45分間、庁舎内のエレベーター使用を禁止しました。これは私たちの研究に基づいています。数年前、奈良県内の大学教授に「喫煙後の息が何分ぐらいたばこ臭いか、調べてほしい」と依頼されました。屋内全面禁煙の企業に依頼し、(1)喫煙前(2)屋外で1本を喫煙直後(3)以後、5分ごと-に喫煙者の呼気中の有害物質濃度を測定しました。

 喫煙直後は測定器が振り切れるほどで、喫煙前の濃度に戻るのに45分かかりました。これが生駒市の保健師に伝わり、今回の対策が決まったのです。「やり過ぎ」との意見もあったようですが、市役所は誰もが訪れる場所です。喫煙直後の人とエレベーターに乗り合わせると、つわりの妊婦は吐き気、化学物質過敏症や気管支ぜんそくの患者は発作の原因となり得ます。

 職場で考えてみましょう。近くの喫煙者が1時間おきに吸っていた場合、呼気は一日中たばこ臭い状態。それが上司なら「臭い」とはなかなか言えません。三次喫煙は「快適な職場づくり」の妨げとなっています。

 営業職や窓口担当者がたばこ臭いと悪印象も与えます。私の研究室ではたばこ臭い人は部屋に入れず、用事は廊下で済ませます。生駒市に続いて奈良県も「喫煙後はエレベーターの使用禁止」と職員や来庁者に呼び掛けています。他の自治体や職場も取り入れてほしいものです。

 急速に使用者が増えている加熱式たばこについても一言。「有害性成分を約90%低減」などとうたっていますが、小さな文字で「本製品の健康に及ぼす悪影響が他製品と比べて小さいことを意味するものではありません」とも書かれています。受動喫煙で心筋梗塞や肺がんのリスクが高まることから分かるように、たとえわずかな量でも健康に悪影響はあるのです。

(大和浩=産業医大教授)

=2018/05/21付 西日本新聞朝刊=

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