【産業医が診る働き方改革】<17>1人で育児、体に異変

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 河野洋子さん(37)=仮名=は、飲料メーカー販売企画部でプロジェクトリーダーを務める2児の母親です。夫は単身赴任中。次男(3)の育児休業後、短時間勤務制度を利用していましたが、昨年から通常勤務に戻りました。産業医である私にも「これからまた頑張ります!」と、はつらつとした表情で報告がありました。

 ところが半年後、健康診断結果を見ていた私は、彼女の小さな異変に気付きました。「眠りが浅い」「いらいらする」と訴え、体重も急に増えています。面談すると、かなり疲れた様子です。プロジェクトは順調で仕事の手応えは感じているとのこと。ただ、急な打ち合わせが多く、帰宅時間は不規則で、遅いようでした。

 保育園児の次男と慌てて帰宅すると、小学4年の長男(9)はお菓子とテレビに夢中です。ランドセルは放置、部屋は散らかり放題。「夕飯前でしょ! 宿題はやったの?」。思わずきつい言葉が口を突きます。

 子どもの世話、夕食の準備と片付け、入浴などをこなすともう夜中。散らかった部屋にため息をつきつつ、就寝します。仕事が充実する半面、家事や育児は「理想通りにいかない」といら立ち、間食も増えていました。

 いくつもの役割を1人で抱え込み、疲弊している河野さん。私は周囲の支援や、仕事の進め方を再考してみるよう勧めました。そこで、河野さんは近所に住む母親に相談し、週に数回、夕方の家事や育児を手伝ってもらうことにしました。

 子どもの生活が規則正しく安定すると心に余裕ができ、仕事に集中できるようになりました。仕事の進め方について相談を受けた上司も、予定外の打ち合わせは避け、できるだけ就業時間内に行うよう職場で話し合いました。すると「予定が立てやすくなった」と、河野さん以外にも好評だと聞きました。

 女性に限らず自分の頑張りだけでは、ワークライフバランスの維持が難しい時期があります。全てを抱え込まず、周囲の理解やサポートを受けながら働き方を工夫することが、キャリア継続には大切です。

 (川波祥子=産業医大准教授)

=2018/06/25付 西日本新聞朝刊=

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