【産業医が診る働き方改革】<18>8割経験の腰痛、対策は?

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 国民の約8割が一生に一度は腰痛を経験するといわれます。程度によっては将来的に寝たきりの原因になる可能性もあり、実は侮れないものです。

 酒田宏さん(46)=仮名=は、大手機械加工メーカーに勤める腕の良い溶接工。ほぼ毎日、機械部品を溶接で組み立てています。「最近、腰回りがだるく、時々痛みも感じます」と相談がありました。「ひどくなると、痛みで仕事に集中できず、溶接作業が雑になったり、悪影響が出たりしないだろうか」とも心配していました。

 私は早速、酒田さんの職場と作業内容を視察しました。重い部品を床に置き、下向きで前かがみの作業が多くなりがちでした。すぐに腰痛の原因が作業姿勢にあると判断できました。

 私は、部品を溶接する作業位置の高さを調整できるよう、電動昇降台の導入を会社に進言しました。これにより、酒田さんは作業姿勢が改善すると同時に、腰のだるさや痛みも軽減したそうです。

 「若い頃は何ともなかったのに…」とぼやく酒田さん。人間の骨格の強度は加齢に伴って低下し、40代を境に劣化が顕著になってきます。このため、姿勢や動きによっては、自らの上半身の重さだけでも腰痛になる恐れがあり、年齢と共にリスクは高まります。

 例えば、職場で起こる腰痛の主な要因は(1)重量物の取り扱い(2)前かがみ、しゃがむなどの不良姿勢(3)同じ動作の繰り返し(4)長時間、同一姿勢の保持-などがあります。重い物を扱うときは支援機器を使う▽姿勢改善には作業位置・高さの調整や十分な作業空間の確保▽繰り返し動作や同一姿勢保持には連続作業時間と休憩時間の配分を見直す、といった対策を最初に検討すべきです。

 どんなことでもできることからやってみましょう。腰痛は、痛みそのものは我慢できても、痛みに伴う品質や生産性、安全性などへの悪影響が懸念されます。従業員が若くても、痛みを訴えていなくても、早め早めの対策が重要であることは言うまでもありません。腰は体の要、大事にしましょう。

 (泉博之=産業医大准教授)

=2018/07/16付 西日本新聞朝刊=

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