アクセルとブレーキの常識覆す 踏み間違い防止ワンペダル脚光 玉名の企業、事故多発受け開発 [熊本県]

ワンペダルは踏み込むとブレーキが作動し、右側面のレバーを右に傾けるとアクセルが利く。さらに右端にはアクセルと連動するアクセルカムクラッチが付いている
ワンペダルは踏み込むとブレーキが作動し、右側面のレバーを右に傾けるとアクセルが利く。さらに右端にはアクセルと連動するアクセルカムクラッチが付いている
写真を見る
ブレーキとアクセルが作動する仕組み
ブレーキとアクセルが作動する仕組み
写真を見る
鳴瀬益幸社長
鳴瀬益幸社長
写真を見る

 高齢者などがオートマチック車のブレーキとアクセルを踏み間違って起こす交通事故が相次ぐ中、玉名市の産業機材メーカー「ナルセ機材」が開発した操作ミス防止装置「ワンペダル」が全国的な注目を集めている。車を走らせるアクセルと停車させるブレーキは、ともに足で踏み込むことで作動する“常識”を転換したのがみそだ。注文に生産が追いつかず、増産に向けて新たな従業員を急募している。

 ワンペダルは、アクセルペダルとブレーキペダルを一体化させた靴底のような形の大型ペダルで、運転席足元のブレーキペダルの位置に取り付ける。アクセルはワンペダルの右側面に取り付けた棒状のレバーを右側に傾けると作動する仕組み。アクセルレバーを右に大きく動かせば速度が上がり、戻すと落ちる。ブレーキは、従来のようにペダルを踏み込むと作動する。

 従来のオートマチック車で急ブレーキを掛ける場合は、右側のアクセルペダルから足を離し、左側のブレーキペダルに踏み替える必要があった。ワンペダルはアクセルレバーを右に傾けて加速中でも、そのままの状態でペダルを踏み込めばブレーキが利く。ペダルを踏むと連動する「アクセルカムクラッチ」が作動し、アクセルが解除されブレーキに切り替わる仕組みになっているからだ。

 開発に当たって鳴瀬益幸社長(82)が着目したのが「とっさのときに足を突っ張るドライバーの習性」だった。急ブレーキを踏むつもりが、そのままアクセルを深く踏み込んでしまう操作ミスは、高齢者に限らず誰にでもあり得るという。社長自身も約30年前、踏み間違え事故を起こし開発を思い立った。1991年の販売開始後も、大学の研究者に意見を求めるなど改良を重ねてきた。

 記者もワンペダルを取り付けた車を試運転させてもらった。右膝を外側に倒して足の重みをアクセルレバーにかけながら操作するのがこつ。一時停止のたびにペダルを踏み換える必要がなく、慣れるとむしろ運転は楽だ。アクセルからブレーキへペダルの踏み換えが不要になり、危険を察知してから実際に車が止まるまでの距離も短縮できそうだ。

 同社によると、ずっと年間10台程度だった販売台数は、各地で事故が報じられた影響もあり、2015年と16年は約100台に急増。車種や年式ごとにオーダーメードのため、従業員11人がフル回転しても納期は半年後になるという。

 同社は増産に向けて3人程度の新規雇用を計画。鳴瀬社長は「悲惨な事故を減らすため、新たな仲間とワンペダルをより多くの人に広めたい」と話す。価格は取り付け費を含め17万円から。

=2017/05/26付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]