チッソの影期待と不安 高岡水俣市長22日就任 患者警戒、少数与党、県議と溝… 民意背に地域浮揚図る [熊本県]

水俣市長選で初当選し、記者会見する高岡利治氏=5日
水俣市長選で初当選し、記者会見する高岡利治氏=5日
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 水俣市の新たなかじを取る高岡利治市長が22日、就任する。自民出身の市長誕生は16年ぶり。選挙では水俣病の原因企業、チッソの事業子会社JNCの労組から全面支援を受けた。市内最大企業との良好な関係を軸に、地域経済の浮揚を市政の柱に掲げる高岡氏だが、議会対策や県議とのあつれきなど不安要素も抱える。水俣病患者団体などからは「チッソの影響力が強まる」と警戒の声も上がる。

 「もう少し、精査が必要だ」。今月中旬、市幹部から、現職市長の下で編成された新年度予算案の説明を受けた高岡氏は、市が水俣港近くに建設予定の物産館事業に難色を示した。市は23日開会の市議会定例会に提案する予算案から項目ごと削除した。

 関係者によると、高岡氏が市議時代に受けた説明と財源面で大幅な変更があったという。予期せぬ反応に市幹部は「どこまでメスが入るのか」と戦々恐々。事業には国、県も関わっており、「今後の財政支援に影響しないか」と気をもむ。

 地元県議との溝も影を落とす。市選出で自民県連政調会長の吉永和世県議と高岡氏は14年、市長選の候補擁立を巡り対立。翌年の県議選で高岡氏らは吉永氏の対立候補を支援し、吉永氏が支部長を務める自民市支部から除名処分を受けた。今回の市長選で市支部は自主投票としたが、吉永氏支援者の一部は現職支援に回ったとみられる。

 高岡氏を市長選で支援した市議は6人。定数16の市議会で過半数に届かない。政党色が比較的薄い「中間派」3人の動向が鍵を握るが、あるベテランは「これまでの経緯もある」と、市議時代に執行部への対決姿勢を鮮明にしていた高岡氏をけん制する。

 会社側と友好関係にあるJNC労組の支持を受けた高岡氏は、JNC上場について「地元として国、県にお願いしていく」と踏み込む。これに対し、「チッソの免責と消滅につながる」と反対する患者団体は身構える。水俣病で分断された地域の融和を図る事業を担当する県幹部は「新市長の考え方を聞き、事業への理解を求めていく」と今後を楽観する気配はない。

 とはいえ、「現職有利」の前評判を覆し、800票近い差で初当選した高岡氏に「閉塞(へいそく)感を打破してほしい」との民意の後押しがあるのも事実。認定患者の男性は「チッソと話ができる市長だからこそ、期待できる部分もある」と複雑な思いで新市長の船出を見詰める。

=2018/02/21付 西日本新聞朝刊=

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