土砂災害進まぬ対策 工事完了は4分の1 豪雨禍から2年 [熊本県]

土砂が流れ込み、犠牲者が出た民家=2016年6月21日、上天草市大矢野町
土砂が流れ込み、犠牲者が出た民家=2016年6月21日、上天草市大矢野町
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大量の土砂や竹などが流れ込み、通れなくなった住宅街の道路=2016年6月21日、熊本市北区
大量の土砂や竹などが流れ込み、通れなくなった住宅街の道路=2016年6月21日、熊本市北区
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土砂災害の危険度などを表示している「県統合型防災情報システム」の画面
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 熊本地震の約2カ月後に県内を襲った豪雨災害の発生から20日で2年。犠牲者6人のうち、5人は土砂崩れにより自宅で命を落とした。現場はいずれも土砂災害警戒区域に指定もしくは指定手続き中の地域だった。県内の警戒区域は約2万1千カ所に上るが、対策が施されたのは約4分の1にとどまる。19~20日にかけても県内には大雨が降り、有識者は「自宅周辺の危険性を確認し、事前の備えを万全に」と呼び掛ける。

 「まるでダムに水を放流するような音がした。近くの川は氾濫し、橋も通れなくなった」。甲佐町の本田恵一郎さん(55)は振り返る。2年前の豪雨で、同町では1時間雨量が気象庁の観測史上4位となる150・0ミリを記録した。

 県内各地で土砂崩れが発生。熊本市北区と上天草市、宇土市の住吉町、椿原町の計4カ所で民家に土砂が流入し、5人が亡くなった。53歳女性が死亡した宇土市住吉町の現場近くの住民女性は「山から大木が押し寄せてきた」と話す。

 県によると、犠牲者が出た上天草市と宇土市の2地区は警戒区域に指定しており、熊本市北区の現場も指定手続き中だった。宇土市の2地区は、崖崩れなどの危険性がより高く開発に制限などがかかる「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」が含まれていた。

 2001年の土砂災害防止法施行を受け、指定が始まった警戒区域は県全域で2万1268カ所。うち9割超の1万9805カ所はレッドゾーンを含む。県は、熊本地震後の調査で新たに6221カ所が警戒区域に当たる可能性があるとして追加指定する方針だ。

 一方、警戒区域のうち崖崩れや土石流などの対策工事が完了しているのは約25%。県の担当者は「区域内に住家が1、2戸しかない場所が多いが、国の工事への補助(2分の1)要件は10戸以上でハードルが高い」と対策が進まない背景を説明する。県は15年度からレッドゾーンから転居する場合に最大300万円を補助する制度を開始。これまで46件の利用があった。

 県は警戒区域を検索できる「土砂災害情報マップ」をホームページで公開。「県統合型防災情報システム」では、地点ごとの連続雨量などを踏まえた土砂災害の危険性情報も発信している。

 熊本地方気象台によると、県内を含む九州北部地方の平年の梅雨明けは7月19日ごろ。引き続き豪雨や土砂災害への警戒が必要だ。静岡大防災総合センターの牛山素行教授は「崖崩れなら1階の斜面側の部屋を避けて2階などに避難することが有効だが、土石流では家ごと流される恐れもある。大雨の前に自宅周辺でどのような災害の危険があるのか把握し、適切な避難方法を考えてほしい」と話す。

=2018/06/21付 西日本新聞朝刊=

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