被災地の学校を熊本の教員が支援 県教委チームが大阪、広島で活動 児童ケア、避難所運営に助言 [熊本県]

西日本豪雨の被災地で、児童生徒の心のケアなどについて説明する県教育委員会の学校支援チーム(県教委提供)
西日本豪雨の被災地で、児童生徒の心のケアなどについて説明する県教育委員会の学校支援チーム(県教委提供)
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学校支援チームの隊員養成研修でアースの浅堀裕さん(右)の講義を聴く受講生=7月、山鹿市の県立教育センター
学校支援チームの隊員養成研修でアースの浅堀裕さん(右)の講義を聴く受講生=7月、山鹿市の県立教育センター
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6月18日午前、大阪府北部で震度6弱を観測した地震で、校庭に避難した大阪府池田市の児童ら
6月18日午前、大阪府北部で震度6弱を観測した地震で、校庭に避難した大阪府池田市の児童ら
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 熊本地震の経験を基に、県教育委員会が6月に立ち上げた教職員の被災地支援組織「県学校支援チーム」。発足直後に起きた大阪北部地震、7月の西日本豪雨でも、災害対応の研修を受けた隊員が被災地入りし、混乱する教育現場を支援した。チームのモデルになったのは国内唯一の組織で、熊本地震の際に活動を目の当たりにした兵庫県教委の「EARTH(アース)」。熊本が全国2番目のチームとして後に続き、師匠格のアースも「心強い」と期待を寄せる。

 「これまで大きな災害がなかったから何をすべきか分からない」。西日本豪雨の発生6日後の7月12日。学校支援チーム隊員で県立教育センター指導主事の塩村勝正さん(48)は、死者・行方不明者17人が出た広島県坂町で地元教員たちの不安の声に耳を傾けていた。

 チームの派遣は、震度6弱以上の地震やその他の災害で、複数の自治体の学校が避難所になると推測される場合、県教育長が判断する。西日本豪雨では、先遣隊として11日に広島入りした塩村さんを通じ、坂町から支援要請を受けて16~20日に隊員3人を追加派遣した。

 「生徒が『水』という言葉を聞くと動揺してしまう」「宿題の作文に被災体験を書いた子がいる」…。

 追加派遣されたチームリーダーの同センター主幹大塚芳生さん(53)は、多くの家が土砂に流された地域の学校で、次々と相談を受けた。熊本地震を例に、不眠など災害直後にみられるトラウマ(心的外傷)の症状を説明。被災体験は聞き出すのではなく、児童生徒が話した場合に寄り添うよう助言した。

 大塚さんは「熊本でも夜眠れない、自宅に入れないなどの事例があった。災害後に子どもにさまざまな反応が出るのは当然のこと。まず先生が落ち着くことが子どもたちの安心にもつながる」と振り返った。

    ◇   ◇

 チーム発足のきっかけとなった2016年4月の熊本地震では、熊本県内の公立の小中高校、特別支援学校の65%に当たる393校が被災。57%に当たる344校が避難所となり、最大で計13万人余りの被災者を受け入れた。

 「学校が避難所になるという意識が希薄だった」「学校防災マニュアルが児童生徒在校時のみを想定しており、夜間に起きた地震の対応に混乱が生じた」。今年3月に県教委が公表した地震対応の検証報告書には、当時の教育現場の課題が列挙されている。

 そんな中、現場で助けになったのが兵庫県教委のアースだ。阪神大震災(1995年)の経験から00年に発足したアースは、災害対応可能な教職員ら162人が所属。中国の四川大地震(08年)や東日本大震災(11年)など国内外の被災地で活動し、熊本地震では4月14日の前震以降、93人が県内208校で避難所運営や児童生徒の心のケアなどについて助言した。

    ◇   ◇  

 熊本県教委は地震後、災害対応のノウハウを持った教職員の育成を決定。16年10月に職員2人が兵庫県教委の隊員養成研修を受講し、同月の鳥取県中部地震では支援に入るアースメンバーに職員らも同行した。17年12月には災害時の対応を「防災教育と心のケアハンドブック」にまとめ、今年6月に隊員14人で学校支援チーム発足にこぎ着けた。

 7~8月には、アースメンバーを講師に招いて隊員養成研修を開き、「初級」「中級」「上級」の研修を修了した小中学の教諭ら24人が新たに加わった。県教委は、20年度までに80人規模のチームを目指す。

 大塚さんは「被災地支援をすることが熊本地震の恩返しになり、地震を語り継ぐことにもつながる」。養成研修で講師を務めたアースメンバーで兵庫県芦屋高の浅堀裕教諭は「全国的に災害が多発する中、仲間が増えて心強い」と話した。

=2018/09/20付 西日本新聞朝刊=

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