被災者癒す「大人食堂」 高齢者の交流の場に 益城町の仮設団地 [熊本県]

仮設団地の集会所でテーブルを囲む「大人食堂」の参加者たち
仮設団地の集会所でテーブルを囲む「大人食堂」の参加者たち
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東日本大震災で被災した岩手から届いたサンマを焼く田崎眞一さん(右)
東日本大震災で被災した岩手から届いたサンマを焼く田崎眞一さん(右)
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 地域のお年寄りに栄養満点の昼食を提供する「大人食堂」が、益城町の仮設団地集会所で定期的に開かれている。核家族化が進む中、熊本地震で仮設住宅に移り料理する意欲を失った高齢者に、バランスの良い食事を取ってもらう取り組みだ。仮住まい生活でふさぎ込みがちな被災者にとって、大勢でテーブルを囲むひとときは心と体を癒やす場になっている。

 秋晴れが広がった10月中旬。午前11時すぎ、同町の小池島田仮設団地の集会所前には香ばしい香りが漂っていた。網の上でこんがり焼き色を付けていたのは、東日本大震災の被災地、岩手県大船渡市から届いたサンマだ。

 この日のメニューは、サンマの塩焼き、ひじきの白あえ、のっぺい汁、サラダなど。仮設の入居者や近隣住民約40人がテーブルに集まり、温かいランチをほおばった。

 仮設団地に義姉(87)と暮らす女性(77)は「ここに来て明るい声を聞くだけで気持ちが晴れる。バランスを考えて作ってもらった料理はとてもおいしい」。毎回参加するという山田貞子さん(85)は「いつもは食事があまり入らないけど、会話しながらだとおなかいっぱい食べられる」と喜んだ。

 子ども食堂ならぬ「大人食堂」を発案したのは、地域を盛り上げるイベントを仕掛ける「東無田復興委員会」代表で、商店主の田崎眞一さん(57)。10年ほど前から、高齢者世帯のお客が食材を購入しなくなったことが気になっていた。核家族化で料理を振る舞う機会がなくなり、加工食品を買い求めるお年寄りが増えているように感じていた。

 そんな中、熊本地震が発生した。田崎さんは、仮住まいで料理に気持ちが向かなくなったり、退去後の暮らしのため食費を抑え、偏った食事をしたりする世帯が気掛かりだった。

 そこで「栄養のあるご飯を食べてほしい」と、同委員会が1年前に「東無田食堂」と名付けて初開催した。「続けてほしい」との声があったが、人手不足などのため継続することが難しかったという。

 その後、グリーンコープ生協くまもと(熊本市西区)に相談したところ、食材の提供を受けられることになった。今年6月から月2回のペースで開き、参加費200円は調理を担うボランティアに支払う。

 「大人食堂」には、東無田や櫛島など四つの集落の住民が立ち寄り、見知らぬ人同士の縁も広がりつつあるという。「地域の人たちの楽しみとして育っているのかな」と田崎さん。災害公営住宅が完成した後も続けようと考えている。

=2018/11/08付 西日本新聞朝刊=

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