県内の企業進出が過去最高 震災後に激減、V字回復 17年度 [熊本県]

10月に県庁であった立地協定締結式で握手する小野泰輔副知事(右)やコアミックスの幹部ら
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 「熊本は地震の安全地帯」。2016年4月の熊本地震直後、県がウェブサイト「企業立地ガイドKUMAMOTO」からこんな記述を削除し、話題になった。震災があった16年度の県内への企業誘致件数は激減。しかし、翌17年度には持ち直し、誘致件数は過去最高を記録した。県は「震災というマイナスをプラスに変えていく」と意気込む。

 「地震から少しずつ復興しているが、これはいいニュースになる。精いっぱいサポートしたい」。10月に県庁で開かれた漫画制作などを手掛けるコアミックス(東京)による熊本市での子会社設立の立地協定締結式。立会人を務めた小野泰輔副知事は力を込めた。

 本年度の県内への工場や事業所の新設・増設の件数は、コアミックスを含め27件(今月12日時点)を数え、17年度並みの水準で推移している。県は立地を促す各種補助金を充実させて企業にアピール。震災後は「投資額1千万円以上で雇用3人以上」など要件を緩和した補助金も新設するなど、力を入れてきた。

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 「地震前は『地震が無い』『人がいっぱいいる』『水がきれい』の3点で熊本をPRしていたが、地震発生と復旧・復興工事の増加に伴う人手不足で、最初の二つは言えなくなった」

 県企業立地課の深川元樹課長は、地震後の企業誘致の状況をこう説明する。県によると、地震のあった16年度の工場や事業所の新設・増設件数は21件にとどまり、08年のリーマン・ショック以来となる落ち込みとなった。

 「ただ、地震被害が局地的で、被災を理由に県外に移った企業が無かったことは、誘致の際に『安心』をアピールする材料になった」と深川課長。全国で相次ぐ災害で企業が拠点を分散化する動きが加速していることや、九州で競合する福岡県の方が人手不足が深刻で従業員確保が難しい事情などもプラスに働いたという。

 実際、17年度には工場や事業所を新設・増設した件数は過去最高の46件に上った。半導体や自動車関連産業の需要増も追い風になっており、46件のうち半導体関連が17件、自動車関連が7件を占めた。地震発生により企業進出が進まなかった16年度の反動もあったとみられる。

 蒲島郁夫知事は6月の県議会で「このV字回復は復興を力強く後押しするもので、企業の皆様の決断は大変ありがたい。震災というマイナスをプラスに変える取り組みを進める」と述べた。

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 企業側には不安は無かったのか。地震被害の大きかった西原村に九州で初となる新工場を来年1月に操業する歯科技工業の「シケン」(徳島県小松島市)の担当者は「地震の発生後は、社内で『(熊本は)大丈夫なのか』という声が出た」と打ち明ける。

 同社は歯科技工士の獲得のため、熊本地震前から九州の中でも採用人数が多かった熊本で新工場の候補地を探していた。最終的に同村を選んだのは、熊本空港に近いことなどが決め手となったという。

 今年6月に菊陽町に熊本事業所を開設したアルミ製品製造販売の「SUS」(静岡市)の担当者は「取引先の工場が近いことが一番の理由だが、一度大きな地震が起きたのでしばらくは起きないだろうという考えもあった」と話す。

 県内の企業誘致の状況について、地方経済総合研究所(熊本市)の宮野英樹事業連携部付部長は「17年度は世界的な半導体需要の高まりが牽(けん)引した。本年度は、これまで少なかった県南への企業誘致も進んでおり、地元自治体のサテライトオフィスを生かした誘致戦略が実を結んでいる」と話している。

=2018/12/13付 西日本新聞朝刊=

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