阿蘇復興へ外国人客を モニターツアー、ガイド研修活発化 欧米客の誘致に課題 [熊本県]

阿蘇・草千里で「冬観光」をテーマに実施されたモニターツアー。今季はあいにくの暖冬だった=1月末
阿蘇・草千里で「冬観光」をテーマに実施されたモニターツアー。今季はあいにくの暖冬だった=1月末
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修復工事が進む阿蘇神社で、ホワイトボードを使ってモニターを案内する阿蘇ジオパークガイドの鉄村拓郎さん(右)=2月中旬
修復工事が進む阿蘇神社で、ホワイトボードを使ってモニターを案内する阿蘇ジオパークガイドの鉄村拓郎さん(右)=2月中旬
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道の駅阿蘇の売り場。「いきなり団子」のコーナーには、外国人観光客向けに多言語表示も見られる
道の駅阿蘇の売り場。「いきなり団子」のコーナーには、外国人観光客向けに多言語表示も見られる
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 熊本地震からの観光復興に向け、阿蘇地域でも外国人観光客向けのモニターツアーやガイド研修が活発化している。地震から3年を迎える2019年度には、県内でも女子ハンドボール世界選手権やラグビーワールドカップ(W杯)の試合があり、20年度には東京五輪も開催される。阿蘇の魅力を国内外の人たちにどう伝え、楽しんでもらうか。現場では手探りが続いている。

 阿蘇山頂部にある草千里一帯で1月末実施されたモニターツアーは「霧氷」「神々の山」「冬の夜空」をテーマにしていた。阿蘇観光と言えば、火口見学や山歩き(トレッキング)が定番だが、新たな散策コースが企画された。

 例えば、阿蘇五岳はかつて霊山で、火山信仰の対象でもあった。ツアー「神々の山」は、修験僧たちの背中を追いながら、草原や宿坊、神社を巡るコース。

 阿蘇地域は、韓国、中国などアジアの観光客に人気だが、この日のモニターは米国、オーストラリア出身の日本在住者や旅行関係者。欧米からの観光客目線に立ち、新ツアーの評価や感度を探る狙いがあった。

 流ちょうな英語で案内したのは阿蘇ジオパークガイドの西田直美さん(65)。「ありきたりの眺める観光ではなく、地元の人が知っている面白い所をもっと知ってほしい」と趣向を凝らし、最後に修験僧の衣装を着て記念撮影する場面も設けた。

 ツアーはおおむね好評だったが、終了後の意見交換会では「修験僧の格好をして回ってみたい」「いや、そんなコスプレみたいな押しつけは困る」と、参加者が求める旅スタイルもさまざまで、考えさせられたという。

   ◇    ◇

 阿蘇神社(阿蘇市)では2月、県在住の英会話講師(米国人)をモニターにして、阿蘇ジオパークガイドが現地を案内する研修会があった。

 地震後の修復をほぼ終えた三つの神殿や仮拝殿の前で、ガイドを務めたのは鉄村拓郎さん(68)。会社勤めをしていた東京で東日本大震災(11年)に遭い、同年に定年後、南阿蘇村に移住。熊本地震でも被災し、自宅は半壊した。翌17年に養成講座を受講し、認定ガイドになった。

 鉄村さんは英語で説明を始めると、やがて小さなホワイトボードを取り出した。さい銭箱がある仮施設に設置されているしめ縄の説明だった。太い縄は「雲」、細く下がったわらは「雨」、ギザギザの紙垂(しで)が「雷」を表し、豊作祈願の風習であることを、平易な英語を使って語り掛けた。

 「図書館に行って、調べ物をしていたら、あの宮沢賢治が農学校教員時代、そんな授業をしていてね。ガイドのアクセントにしようと思った」という。

 観光客役の英会話講師からは「おさい銭はいくら入れればいいの?」との質問もあり、笑いに包まれた。

   ◇    ◇

 阿蘇地域には17年、約1168万人の観光客が訪れているが、熊本地震前(約1500万人)の水準にまで回復していない。国別では、韓国、台湾、香港、中国などからの観光客が増加傾向にあるが、欧米客の誘致も課題になっている。

 熊本大に留学したのが縁で、道の駅阿蘇(阿蘇市)で多言語対応スタッフとして勤務するフランク・リモージュさん(38)=フランス出身=は、こうした動きをどう見ているのか。

 「フランスの人は、かやぶきの家や神社、着物など、日本っぽいものや伝統に興味がある。少人数で自由な旅を好むので、ガイド付きのツアーはあまり好まないんじゃないかな。そもそも、阿蘇を全く知らないから、スマホなんかで検索できる、興味深い情報を求めていると思う」

 地域づくりに「よそ者の視点(外からの視点)」が有効なように、外国人観光客の側に立ってガイド内容を見直す中で、いろんな工夫や新機軸も生まれているが、まだまだ検討の余地がありそうだった。

=2019/03/14付 西日本新聞朝刊=

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