「7」の記憶 震える児童 心のケア 復興へ(4)

熊本県内の多くの公立小学校では新1年生が入学式を迎えた=11日、熊本県益城町
熊本県内の多くの公立小学校では新1年生が入学式を迎えた=11日、熊本県益城町
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 校庭の満開の桜が、新入児童116人の笑顔を出迎えた。11日、熊本県益城町の広安西小。井手文雄校長は入学式で「地震を乗り越えた町の未来を担う大切な子どもたちです」と出席した保護者に語り掛けた。

 養護教諭の江崎賀子(のりこ)さん(44)は熊本地震以降、傷ついた児童の心のケアに取り組んできた。

 昨年5月の学校再開後、保健室を訪れる子が増え、欠席がちになる子もいた。目に見える異変が落ち着いたと感じた今年3月、気になる話を聞いた。

 「頑張れー」。高学年の男児は自宅でテレビに向かって突然、興奮気味に叫んだという。母親によると、画面に東日本大震災の映像が流れていた。3月は地震関連の報道が増える。

 災害や事件、事故の節目になると、心身に不調をきたすアニバーサリー(記念日)反応-。熊本地震から1年、江崎さんは表情を引き締める。「子どもたちのサインを見逃さないようにしながら、長い目で見守らないと」

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 兵庫県立大大学院教授の冨永良喜さん(64)=臨床心理学=が3月、広安西小を訪ねた。4年生の教室で披露したのは軽い運動。「全身にぎゅーと力を入れて、すとーんと抜いて」。不安や不眠になったときのリラックス法という。

 冨永さんは阪神大震災以降、被災地で子どもの心理支援をしている。教室に広がった笑顔に表情を緩めながらも「今も気持ちを押し込めている子はいる」と話した。熊本県教育委員会によると、昨年末の県内調査で児童生徒17万7627人のうち、1247人が「カウンセリングが必要」との結果が出ている。

 教室で「数字の7を見たくない」と打ち明けた男児(10)がいた。震度7の激震を2度体験。「7」の数字は強烈な記憶として刻み込まれた。男児は「地震でびっくりしたら、体操をしてみる」と言った。熊本地方は4月9日にも、最大震度3の地震が起きた。

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 県東部の小学校に入学した男児(6)は、自宅の2階に上がれない。

 2階の寝室に1人でいたとき地震を体験した。母親(28)が駆け付けると、震えて激しく泣いた。以降、1階で両親、妹の4人で一緒に寝る。今も怖いのだろう。他の家では普通に上がれる階段も、自宅では見上げただけで、母親の脚にしがみつく。

 入学を控え、1階の客間に学習机を運び子ども部屋にした。男児は最近、「ここで、1人で寝るけん」と言うようになった。ささやかな成長が両親はうれしい。この1年で男児は6センチ背が伸びた。

=2017/04/12付 西日本新聞朝刊=

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