2009年3月31日

ひた地域づくりフォーラム 観光に生かそう ふるさとの食材

 ふるさとの食材を観光に活用し地域を活性化させようという「ひた地域づくりフォーラム」が11日、大分県日田市の日田市民文化会館・パトリア日田で開かれた。旅行情報誌「九州じゃらん」(リクルート発行)と西日本新聞社などが2008年に発足させた地域おこし事業「きゅうしゅう旅づくり塾」に同市観光協会などが参加したのをきっかけに、同年12月に市内18の飲食店、旅館がそれぞれ地元の食材をふんだんに使った「日田どん鍋」を開発。「冬の日田を楽しむ新たなご当地グルメの誕生」と話題になった。フォーラムでは「日田どん鍋」の成果と“天領日田”観光の課題を探った。

 ●コーディネーター 

日田市観光協会事務局長  佐藤真一氏

 ●パネリスト 

▽日田温泉旅館組合長  諌山 吉晴氏

▽寶屋社長 佐々木美徳氏

▽「ラーメン・やきそばで日田を元気にする研究会」代表 吉田 明彦氏

▽あやめ工房会長 栗山 勝子氏

 ■トークセッション

 ●豊かな食品活用に苦心・諌山氏 顔の見える材料が食育・佐々木氏 もっと地元の特産品を・吉田氏 農家主婦で農産品加工・栗山氏

 ▼日田の食と観光

 佐藤 まずは観光客と接している現場の皆さんが、地元の食材と観光をどう感じているかを聞きたい。

 諌山 宿泊客が少ない冬場の対策を組合内で議論したのが取り組みの発端。日田市郡の市町村合併によって市域が広がったこともあり、白菜、山芋、シイタケ、巨峰、しょうゆ、みそ、ビール、焼酎、地酒などの豊富な食材をどう取り合わせていくかが、一番の課題だ。

 佐々木 企画に参加して「トロッと白菜と三色つみれ」という日田どん鍋を作った。そのほか、店では日田市内を流れる三隈川で取れたアユの塩焼きやアユのうるかなどをお客さんに出している。水は井戸を掘って使っている。地元の食材と向き合っていると思う。

 吉田 約3年前から市内の焼きそば店が集まって研究会をつくり、「日田やきそば」で地域おこしを展開している。最初は「いかに日田に来てもらうか」だったが、今は「いかに日田での滞在時間を長くとってもらうか」。「日田どん鍋」の取り組みはその意味で良い企画だ。

 栗山 農家の主婦28人が会員となって小さな農産加工所をつくり、まんじゅうやもちなどを作り、JAの直販所などに出している。昨年5月には、日田市内の豆田地区に「かあちゃんの味ひいな」をオープンし、だんご汁やがめ煮、ナシカレーなど、すべて地元の食材を使った郷土料理を提供している。

 ▼食と経済効果

 佐藤 「日田どん鍋」がヒットした要因には、食に対する消費者のイメージがあると思うが。

 諌山 地元の食材には、安全・安心がある。今、福岡の人々が日田市の大山地区にある道の駅で野菜などを買って行くのは、品物に生産者の顔写真などが張ってあり、食の安全・安心につながっているからだ。私たち飲食店や旅館も、考える時期に来ている。

 佐々木 地域経済の活性化、安全・安心、顔の見える食材、それらが子どもたちへの食育や郷土への愛情につながって、地域を支える若者を育てるのだと最近、思うようになった。

 佐藤 今の観光客は、ただうまいものを食べに来るのではなく、日田そのものを感じたいのだと思う。食のほかに地元の産品がお土産として買われていくと、地元全体への経済波及効果もある。

 吉田 食に限らず日田にあるものを使う必要がある。私たちは、他都市に行って日田やきそばをアピールするときに、日田杉で作った器やトレーなどを使っている。コストはかかるが、利益よりも日田をPRするためだと思っている。

 栗山 「ひいな」では、器はすべて地元の国指定重要無形文化財・小鹿田(おんた)焼を使っている。お客さんが食べられた後、器が小鹿田焼であることに気付いて「すごいですね」と驚かれる。効果は大きい。

 佐藤 最後に地域づくりは、行政の役割も大きい。行政に望むことは。

 諌山 「日田で日田の食材を食べて元気になって帰ってくる」-そういうアピールを大々的にしてほしい。

 佐々木 食材の仕入れには、どの店も苦労している。仕入れ先の一本化やJAなどとの調整役を担ってほしい。

 吉田 関西・関東のデパートなどでのイベントに、行政の補助があると助かる。

 栗山 福岡での宣伝を今まで以上に進めてもらいたい。

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 ●日田の底力を自慢できるものに 日田市長・佐藤 陽一氏

 「日田どん」こと大蔵永季は、今は相撲の神様ですが、平安時代、京の都で活躍したスターです。その「日田どん」は、当時、日田の恵みを鍋にして食し、スターになるため努力していたと思います。食べる鍋も毎日、材料が違っていたと思います。

 だから今によみがえった「日田どん鍋」は、多彩、多様でなければなりません。それぞれの料理店や旅館が、日田で取れた食材を使い、料理人が腕を振るってできた「日田どん鍋」、農業と観光が結び合い「どうだ、日田の底力は」と自慢できるものになりました。

 高速道路料金も安くなりました。ぜひ日田に来て「日田どん鍋」に舌鼓を打ってください。

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 ●成果発表 「日田どん鍋」の取り組みについて 地域にお金が残る仕組みに
 ▼日田市観光協会事務局長 佐藤真一氏

 「日田どん鍋」の開発の成果として、3つのポイントがある。1つは鍋を通じて冬の観光のPRができた。二つ目は、あらためて日田の食材を見直す機会になった。そして、食べてもらった観光客からさまざまな感想と意見をもらったことだ。

 もともと日田の観光は冬が弱いという意識があったが、地元の食材を使い、また開発に携わった旅館から飲食店、生産者まで多彩な情報を発信したことで、たくさんの取材を受け、報道され、冬場の観光客増につながった。

 鍋を食べた観光客のアンケートでは、ほとんどの人が味に満足しており「鍋を通して地域の活性化に取り組んでいる姿が素晴らしい」などの応援メッセージもあった。加えて「また食べたい」「違う店にも行きたい」など、リピート志向の高さを知る意見も多く、回遊性など今後の改善点も見えてきた。

 「きゅうしゅう旅づくり塾」の最終目標は、観光人材の教育だが、旅行商品としての「日田どん鍋」を開発しただけでなく、情報発信などを自分たちで考え、やり抜いたことは、大きな自信になった。ご当地グルメとしては、まだまだ実績を積まねばならないが、いずれは食の域内流通システムを築き、地域にお金が残る仕組みづくりに貢献したい。

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 ●講演 観光の好条件そろう日田 JTB九州地域活性化事業推進室リーダー 室岡 祐司氏

 JTB九州では現在、九州7県の20を超す地域でまちづくりのお手伝いをしている。例えば、日田市では天ケ瀬温泉活性化事業に取り組んでいる。また車エビ養殖が地場産業の大分県・姫島では「間引かれてしまうエビを活用できないか」と、シューマイの開発に挑戦。大分空港で販売する予定だ。

 食は命の源であり、旅行の目的となる大変重要なものだが、地域づくり全体からみると、コンテンツの1つ。接客やサービス、まちの雰囲気が良くなければ、せっかくの食材も台無しだ。温泉、川など豊かな自然と歴史、農業が息づく日田は、好条件がそろっている。

 国内旅行の市場調査では「行ってみたい旅行タイプ」の上位は温泉、自然、グルメ、歴史などで、特に20代女性の1位はグルメと食への関心が高い。また、旅行スタイルも物見遊山的な周遊型の旅行から、訪問先でどういう時間を過ごせたかという時間消費型、体験型旅行への関心が高い。JTBグループは、総合旅行業から交流文化産業への進化を目指しており、JTB九州は九州に根差す地域会社として地元の皆さんとともに地域を活性化し、新たな旅の商品や地域産品などの開発を進めている。

 ご当地グルメでは、2008年11月に福岡県久留米市で開かれた「B-1グランプリin久留米」に、2日間で20万人以上の人出があった。手軽さや地域の物語性が受けたのだろう。今、旅行会社では10月以降の商品を開発中。日田どん鍋と一緒になった取り組みができればと期待している。

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 ▼主催 日田市観光協会、西日本新聞社

 ▼後援 日田市、大分県西部振興局


=2009/03/31付 西日本新聞朝刊=

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