2009年11月20日

【ふくおかマルシェ特集】食は人を結ぶスイッチ 「マルシェ」旗振り役 小山薫堂さんに聞く

p20091120_1.jpg ■生産者にスポット当てる

 旬の食材を生産者や加工業者が消費者に届ける青空市場「ふくおかマルシェ」。9月に始まった福岡市など全国11カ所で開催中のマルシェの理念や企画への思いを、「マルシェの旗振り役」であり、食のコラムも多く執筆している放送作家の小山薫堂さんに聞いた。

 僕がマルシェでやろうと思ったことは、生産者の地位をもっと上げたいということです。
 以前に「料理の鉄人」というテレビ番組を手がけ、そこから料理人のスターが生まれました。
 それまでは、レストランなど店の名前が前面に出て料理人の名は後だった。それが番組によって料理人の名前が前に出るようになった。料理人の地位が上がり、責任が重くなった分、みんなが努力して全体としてお店のレベルが上がったと思います。マルシェによって生産者にスポットが当たり、スターが生まれたらいいなと思ったのです。

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 マルシェは生産者と消費者が直接向き合う場です。生産者は今まで見えない人に向かって作っていたけど、食べる人の顔や気持ちを思い浮かべれば、もっと努力しようとか、ここは変えなければと考え、レベルアップにつながると思うのです。
 消費者も生産者の話を聞けば、野菜やお米作りがどんなに大変か分かる。お互いを思いやる気持ちが生まれることが一番大切だと思います。
 生産者が大変な思いで作る農産物を、都市に住む私たちがこんな安い値段で買っていいのかと思うことがあります。豊作の野菜は安いと思っているけれど、それは流通が生み出す価格であって、生産者の努力への正当な対価ではない。
 おいしさもそうですが、なぜマツタケがシイタケより高いのか。僕はシイタケの方がおいしいと思うけど、それは希少性であるとか流通で価格が決まるから。当たり前と思う価値観を疑うというか、流通や生産組織の問題を立ち止まって考えるきっかけにしてほしい。食べ物は土や雨、太陽などいろいろな恵みが与えてくれます。でも人は当たり前のような顔をして食べている。僕は謙虚さが足りないと思います。

   *   *

 脚本を手がけた映画「おくりびと」には食のシーンが随所にあります。命のバトンタッチというテーマもありますが、人間にはいろんな業があって本当は罪の意識を感じながら、でもうまいからどうしようもないんだという、人間の持つ意志の弱さやごう慢さが食で表現できるかなと思ったからです。食べ物は命をつなぐだけでなく、おいしいものを一緒に食べて「これ、おいしいよね」と言えば相手とつながった感じになりますよね。
 食は人との結び付きを作るスイッチ。時に思い出のしおりになります。マルシェは食を通じた学校です。そこで学ぶことはたくさんありますし、人と人とがつながる喜びを分かち合えれば幸せではないでしょうか。
(聞き手は情報開発室・宇田懐)


=2009/11/20付 西日本新聞朝刊=

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 【写真】こやま・くんどう
 放送作家。1964年、熊本県天草市生まれ。人気番組「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」などを企画。初めて脚本を手がけた映画「おくりびと」が第81回米アカデミー賞外国語映画賞受賞。

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