2010年6月15日

「苦手野菜 無理せずに」「なぜ、子どもはピーマンが嫌いなのか?」 子どもの食 管理栄養士の幕内さん提案

 食育が盛んになる中、子どもの野菜嫌いを克服するための講座や料理本が人気だ。しかし、その流れに“反旗”を翻す新提案が登場した。病院や保育園などで食事指導に携わる管理栄養士幕内秀夫さん(56)=東京都。「子どもの野菜嫌いは偏食ではない。無理に食べさせないで」と訴える。3月上旬に出版する著書「なぜ、子どもはピーマンが嫌いなのか?」(西日本新聞社)で持論を世に問う幕内さんに、その真意を語ってもらった。 (渡辺美穂)

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油や砂糖漬けへの警告の書「なぜ、子どもはピーマンが嫌いなのか?」
子どもはピーマンが嫌いだが…=食品会社「カゴメ」の2008年調査を基に作成(同書より)

調味料頼りこそ問題
「おかずよりご飯」心掛けて」

 ◆「好き」は赤や黄
 子どもが好きな野菜、嫌いな野菜の図を見てください。「嫌い」の方は、緑色で苦味のある野菜が目立つ。「好き」の方は、赤色や黄色で甘みがあるものが多い。これには、決定的な理由があると思います。
 大人も、緑色のトマトやカキは食べません。食べるとおなかを壊すからです。未熟な果実は、一般的に緑色で苦味や酸味が強い。私たちの本能には、先祖代々の経験から「緑色や苦いものは、食べるとろくなことがない」と刷り込まれていてもおかしくありません。大人は経験で、ピーマンのおいしさを知っていますが、子どもは本能的に判断していると考えられます。
 実は、ピーマンも熟れれば赤くなり、苦味もなくなります。完熟ピーマンなら、好きな野菜に食い込む可能性は大きいのです。

 ◆油と砂糖漬けに
 苦手野菜を、何とか子どもに食べさせようと頑張ればどうなるか。お子さまランチがいい例ですが、マヨケソ(マヨネーズ、ケチャップ、ソース)やチーズといった調味料で風味をごまかすことになります。
 マヨネーズの材料は7割が油。ソースには、砂糖がたっぷり入っています。油や砂糖は人間が本能的に好む味で「おいしい」のは間違いないのですが、大人であっても一度はまると抜け出せなくなるのが怖いところ。現代人の死因の過半数を占めるがん、心臓病、脳血管疾患など生活習慣病を招く要因の一つは、油と砂糖漬けを止められない食習慣です。
 苦手野菜を食べさせることと、生活習慣病を招く嗜好(しこう)に染めないこと。どちらがみなさんの子どもにとって大切でしょうか。

 ◆大切なでんぷん
 私も子ども時代、ピーマンやニンジンは食べませんでした。それでもずっと、病気知らずです。当時、子どもはご飯で空腹を満たし、おかずは大人のものから少しもらう程度。これは非常に理にかなっています。
 子どもの胃袋は小さい。だから、最優先で必要なのは効率よくエネルギーが取れるでんぷん。大事なのはおかずよりご飯。微量栄養素が豊富とはいえ、野菜の優先順位は低いのです。
 実際、子どもが好きな野菜の図には、イモやトウモロコシなど「穀物」が複数入っています。それらはつまり、でんぷんです。子どもは体に必要なものをちゃんと食べている。野菜嫌いに関する相談も、「ご飯(でんぷん)ばかり食べる」という内容が多いのです。
 偏食をなぜ戒めるのか。一番の理由は、食べるべきものを食べないことが問題だから。「特定の野菜嫌いは、偏食ではない」と強く言いたいのです。

 ◆自然な甘味こそ
 苦手野菜は、家族が食べる姿を見せれば徐々に食べるようになります。砂糖と油の味は、教えなくてもいずれ自分で覚える。せめて幼いうちは、親や先生から教えないでほしいのです。
 いま世間で言われている食育は、「野菜不足」より深刻な問題を見落としています。一つは主食の重要性。同じ炭水化物でも、ご飯とパンは大違い。食パンはそれ自体に油や砂糖が含まれます。また、ご飯なら、おかずには、みそ汁や煮物が合う。でもパンの場合、ジャムやマーガリン、ドレッシングをかけたサラダ、ハムエッグなど油や砂糖を重ねて取る献立になりがち。食卓全体がどうなるかが肝心です。大人がそれと分かって食べる限りは、それぞれの価値判断ですが、食生活を親に頼る子どもは別だと考えます。
 次に、おやつの問題。保育園や幼稚園、学校や留守家庭では、砂糖や油を使った「菓子」を与えることが増えています。これは、マヨケソと同じで濃い味を止められない嗜好になります。子どものおやつは、空腹を満たす軽食。おにぎりやうどん、焼き芋など自然の甘みが理想です。幼いうちから油と砂糖の「とりこ」にしないことは、野菜嫌いの問題より、子どもの一生を左右する重要な食育のポイントだと思うのです。

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 同書「なぜ、子どもはピーマンが嫌いなのか?」は定価840円。問い合わせは西日本新聞出版部=092(711)5523。
 ※西日本新聞ネット書店からもご購入できます→ http://shop.nishinippon.co.jp/asp/ItemFile/10000259.html

 ▼幕内秀夫(まくうち・ひでお) 1953年、茨城県生まれ。東京農業大栄養学科卒業。「学校給食と子どもの健康を考える会」代表。「FOODは風土」を提唱し、欧米模倣の栄養教育に疑問を投げかける。「粗食のすすめ」(新潮文庫)や「変な給食」(ブックマン)など著書多数。

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=2010/02/28付 西日本新聞朝刊=

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