2010年7月15日

むすび庵便り・八尋幸隆<13>関係修復 消費者とつながる

雑穀作りでヒエ、アワなどの間引き作業をする仲間たち

 先月、とりわけ百姓仕事が大好きなメンバーが集まって結成した「むすび庵百姓隊」の稲の種まき作業でした。4月から始まった作業は「田直し」「あぜ草刈り」「溝さらえ」など、かなり本格的。単なる農業体験ではなく、米作りの一連の作業を「責任を持って」実践することで、作業のない時でも田んぼや米、そこにすむ生き物たちに対する思いや気遣いが出てくる。人ごとではない米作りを通して、田んぼの大切さや、自分と田んぼのつながりが自然と分かってくるのです。

 先日、ある会合で自炊式の飲み会を行ったときのこと。食材を見ると、かなりの数が外国産でした。「やっぱり外国産かー」と私が言うと、友人は「おれはちゃんと外国産と書いてあるほうが安心するよ。国内産と書いてあってだまされるよりまし」。

 ここまで国内産の信用が落ちている-。がくぜんとしました。何度も食品偽装事件を経験したからでしょうか。作る人は食べる人を、食べる人は作る人のことを考える関係は、もうこの世の中には期待できないのでしょうか。

 先進国のなかで、日本ほど都市と農村が接近している国はないといいます。両者のよりよい関係づくりのためには恵まれた条件のはずですが、それは物理的な距離であって、心の距離ではなさそうです。

 このコーナーに目を通されるような方は別ですが、ごく普通の消費者にとって、農は全くの人ごとであり、とても農の行く末に関心があるようには思えない。だって「日本は自給率が低いので毎日の生活に困っている」と言う人に出会ったことはないですものね。こんな関係の中で、国や有識者がいくら「自給率の向上」を叫んでも実現できるはずもない。困っていないものが解決されないのは当然です。

 生産物ではなく、政府が税金で農家の営みに対してお金を支払う「直接所得補償」もしかり。欧州連合(EU)では農家所得の6―8割が直接所得補償によるものだといわれます。例えばドイツでは環境に配慮して生物多様性を保全する農業、スイスでは標高の高いところで草地を守る畜産などに手厚い保護がなされていますが、これは国民の合意ができているから可能なのであって、形だけまねしてもうまくいくわけがない。農業を、単にモノを作り出す産業としてだけとらえれば、このような制度はありえないのですから。

 農の問題を人ごとではなくわがこととしてとらえてもらうには、離れすぎた関係を修復してつながりをとりもどす仕掛けが必要です。より良いつながりをつくる。それが私が思う、むすび庵の存在理由なのです。 (福岡県筑紫野市「むすび庵」庵主)

=2010/06/13付 西日本新聞朝刊=

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