【福岡】粕屋町長選9月4日告示 財政状態良好、一方で待機児童問題も

開発が進むJR酒殿駅前の農地。奥には志免町境のぼた山が見える。3年後には住宅団地が出現する予定だ
開発が進むJR酒殿駅前の農地。奥には志免町境のぼた山が見える。3年後には住宅団地が出現する予定だ
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穴が開いたままの仲原保育所の玄関の天井
穴が開いたままの仲原保育所の玄関の天井
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 前町長の辞職に伴う粕屋町長選が9月4日に告示される。元町課長の杉野公彦氏(52)、元副町長の箱田彰氏(64)の新人2人が立候補を表明、選挙戦になる見込みだ。全国の町村の中で、この1年の人口が最も伸びた粕屋町。人口増は歳入増につながる一方で、待機児童などの問題も生み出している。

 今月下旬、粕屋町のJR酒殿(さかど)駅そばにある農地(約11ヘクタール)を何台もの重機が行き交い、更地にしていた。買い物客でにぎわうイオンモール福岡から約1キロ。約23億円かけて2021年度までに約500戸の住宅地などに整備する土地区画整理事業の現場だ。工事関係者は「立地も良く、人気を集めるのは間違いない」と自信を見せる。

 総務省が発表した今年1月時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、粕屋町は前年から702人増え、全国の町村で最大の伸び幅になった。町制が施行された1957年当時の人口は約1万1千人。現在(7月末)は4万7千人を超え、数年内には5万人を突破する勢いだ。町民の中には「『市』への移行もそろそろ考えないと」という声も上がる。

 福岡空港や九州道の福岡インターチェンジに近く、JRの駅が六つもある。面積約14平方キロ。旧産炭地の小さな町は相次ぐ開発でベッドタウンに生まれ変わった。酒殿駅前にいたタクシー運転手の男性(68)は「昔は炭鉱住宅と畑ばかりだったのに」と振り返る。

 人口増で住民税や固定資産税などの歳入は増えた。地方税の収入を必要な経費で割った財政力指数は0・84(2016年度決算)で、政令市を除く県平均0・51(同)を大きく上回る良好な数字だ。収入に対する実質的な借金の割合を示す実質公債費比率。18%超で黄信号とされるが10・7%(同)まで減少している。

 しかし、町幹部の一人は警鐘を鳴らす。「人口増はもろ刃の剣。収入増にはつながるが、インフラ整備などの支出も増え続ける。交通渋滞などの生活環境の悪化にもつながりかねない」という。

 その一つが待機児童問題。町によると、保育所などへの入所を希望しながら入れない児童数は今年4月現在で194人。来年は、こども園の増築と保育園の新設で定員が145人増える予定だが、希望を満たせるかは定かではない。

 町役場の南西約1キロにある町立仲原保育所。悩みは1980年に建築された園舎の老朽化。玄関の天井には、雨漏りの水を落とすための大きな穴が開き、来訪者を驚かせる。「穴は雨水がたまらないようにと、天井落下の予防の意味もあるのですが…」と山内美和子園長はため息をつく。

 昨年6月、町は仲原保育所を含む老朽化した保育所2園の民営化方針を打ち出した。民営保育所の園舎建て替えに交付される補助金を活用する方針だったが、サービス低下を危ぶむ保護者から反対論が出て、民営化は宙に浮き、施設の更新は進んでいない。

 町が民営化を打ち出す背景には将来的な見通しもある。町人口は増え続けるが、未就学児(0~5歳児)の数は2014年の3973人をピークに、昨年は3700人台となった。親世代を見ると、40歳代は増加傾向が続くが、20歳代は減少傾向。

 「もとは小さな町。人口増はいつか高齢化につながる。将来的な高齢化も見据えて打てる策を打とうということなのだろうが説明が足りなかったんじゃないか」と町民の一人はつぶやく。

 人口とともに新たな課題も増える粕屋町。一方で、それはまちづくりの担い手が増えるということでもある。将来も見据えながら、政策を説明し、エネルギーを最大限まで高めるリーダーが待たれている。

=2018/08/31付 西日本新聞朝刊=

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