【福岡コンフィデンシャル】「四面楚歌」でも強気 小川知事の“鈍感力”

定例記者会見で12月補正予算案について説明する小川洋知事。複雑な政局を乗り切り、3選出馬の表明時期をうかがう
定例記者会見で12月補正予算案について説明する小川洋知事。複雑な政局を乗り切り、3選出馬の表明時期をうかがう
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 7日夕、県庁議会棟。自民党ベテラン県議は「小川知事、3選出馬へ」と一斉に報じるテレビを見ながら、苦虫をかみつぶしたような顔でつぶやいた。「『憎まれっ子 世にはばかる』というが…」

 職員不祥事への対応や福岡市との宿泊税導入問題、それを厳しく追及する同党県議団のプレッシャー。夏以降、知事・小川洋は「四面楚歌(そか)」と言える状況に立たされた。自民県連関係者は「普通の精神なら持たない。小川の出馬断念は十分にあり得た」と振り返る。

 だが、小川の側近は「本人からただの一度も辞めたいなんて弱音を聞いたことはない。不出馬の可能性は最初からゼロだ」と否定する。小川の自信はどこから来るのか。この側近が指摘するのは、小川の「鈍感力」だ。

 鈍感力-。作家・渡辺淳一が2007年に出版した同名の著書はベストセラーになり、支持率低下に悩む当時の首相安倍晋三に元首相の小泉純一郎が「目先のことには鈍感になればいい。『鈍感力』が大事だ」と発言したことで流行語になった。あえて鈍感になることが、複雑な時代を生き抜くための力になるという処世術だ。

 9月議会前、職員不祥事への対応について、ある重鎮県議から「答弁で毅然(きぜん)とした姿勢を示すべきだ」と諭された小川は「私自身の減給処分までした。それでも不祥事は起きましたから」と開き直った。

 この言葉は、自民の怒りの炎に油を注いだ。同月議会は、審議が何度も中断。テレビでも小川が追及される姿が繰り返し流された。ただ、多くの県民の受け止めは「自民による知事いじめ」。小川は不祥事対策として職員とともに来庁者にあいさつする研修に参加し、笑顔を振りまいた。

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 「小川県政」の生みの親とされる副総理兼財務相の麻生太郎と小川の関係が疎遠になったきっかけは、2年前の衆院福岡6区補欠選挙だ。麻生の再三の応援要請に小川が応じなかったことに麻生が腹を立てたため-とされている。ところが、麻生の側近は「話は単純じゃない」と打ち明ける。

 真相はこうだ。補選の告示直前、小川から麻生側近に電話が入った。「(麻生が応援する候補の)出陣式に出た方がいいか、(麻生)本人に聞いてほしい」

 側近は「聞かなくても分かる。来てくれ」と返したが、小川から「それでも聞いてほしい」と懇願された。「しつこく言うから、本人に聞いたよ。案の定『来てくれ』だった」。小川に伝えたが、後になって小川の方から「やっぱり行けません」と翻意の連絡を受けたという。

 自民県議団幹部は、小川をこう評する。「元官僚なので仕事はできる。でも人の心のひだや悩みを想像するのは苦手なのでは」

 小川は16日、福岡入りして宗像市の世界遺産などを視察する官房長官・菅義偉に同行する。菅は補選で麻生が推す候補とは別の候補をひそかに支援し、勝利に導いた。公明党、創価学会との付き合い方などで菅と麻生との間に距離があることは知られている。

 「この時期に麻生さんのお膝元で菅さんに同行するなんて刺激が強すぎじゃないか」。周囲は懸念するが、小川に気にする様子はない。小川は翌17日、麻生の地元、飯塚市で知事選前最後の政治資金パーティーに臨む。 (敬称略)

=2018/12/14付 西日本新聞朝刊=

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