10月はピンクリボン月間 乳がん経験 糧に 社会を変える CSRプロジェクト代表理事 桜井なおみさん

講演に訪れた福岡県久留米市で「私が乳がんになったことには意味がある」と語る桜井なおみさん=9月23日
講演に訪れた福岡県久留米市で「私が乳がんになったことには意味がある」と語る桜井なおみさん=9月23日
写真を見る

 ●「患者の現状知って」 社団法人立ち上げ就労支援

 10月は乳がんの正しい知識を広め、検診を受けるよう呼び掛ける「ピンクリボン月間」。がん患者の就労環境の改善を目指し、国のがん対策を動かしてきた一般社団法人「CSRプロジェクト」(東京)代表理事の桜井なおみさん(50)は、乳がん経験者の一人だ。「がんになっても終わりじゃない。もっと患者の現状を知ってほしい」。乳がん経験を糧に社会を変えている。

 桜井さんは大学卒業後、設計事務所のデザイナーとして勤務。仕事に夢中だった37歳の時の健康診断で、右胸に乳がんが見つかった。「頭の中が真っ白になった」と振り返る。

 診断の1カ月後に右乳房の全摘手術を受け、抗がん剤治療のため休職した。8カ月で職場に戻ったが、ホルモン治療の副作用や術後のリンパ浮腫で体はつらかった。それでも、残業はなくならず、通院のための休みも取りづらかった。職場に治療との両立を支える理解や制度はなく、「もう無理だな」と復職から1年半で退職した。

 失業保険を受け、職業訓練校に行くと、働く意欲があるのにがんで会社を辞めざるを得なかった仲間がいた。がん治療が進歩して社会復帰する患者は多いのに、社会は変わらない。「何か変じゃないか」。がん患者が働き続けられない社会に怒りが込み上げた。

 国立がん研究センターによると、2012年に新たにがんと診断された約87万人のうち、20~64歳の就労世代は29・7%を占める。にもかかわらず、がんの診断後、3人に1人が依願退職するか、解雇されたという調査(13年)がある。

 桜井さんは07年9月から約1年、東京大が社会人向けに開いた医療政策人材養成講座に通った。メンバー7人でがん患者約400人にアンケートをし、「がん患者の就労・雇用支援に関する提言」をまとめた。

 同時に「CSRプロジェクト」として提言を実現する活動を始め、11年には一般社団法人を設立。独自調査結果の公表、シンポジウム開催などを続けるうちに、がん患者の就労問題が認知されていくのを感じた。

 11年、厚生労働省のがん対策推進協議会に参考人として呼ばれ「がんになっても安心して生きられる社会を」と訴えた。その後まとまったがん対策推進基本計画(12~16年度)に「職場の理解の促進、相談支援体制の充実を通じて、がんになっても安心して働き暮らせる社会の構築を目指す」と盛り込まれた。

 「がんは日本人の2人に1人がなる病気。がん患者が生きやすい社会をつくることは、誰にとっても助けになるはず」と話す。そのために一人一人にできることがある。「がんを知ること。がんという病気が分かれば、自分のがん予防になるし、職場の人ががんになったときにも『お互いさま』と考えられるのではないでしょうか」

 ●がん患者の復職相談、職業紹介も

 桜井さんが代表理事を務める「CSRプロジェクト」は月1回、東京都内で、働くがん患者が集まり、雇用継続や就職、復職についての悩みや不安を共有する「サバイバーシップ・ラウンジ」を開いている。

 がん患者向けの就労に関する電話相談「ほっとコール」、医療関係者・人事担当者向けの「就労サポートコール」も実施。がんの経験がある社会福祉士や社会保険労務士らが対応している。いずれも無料で相談時間は30分程度。ホームページ(http://workingsurvivors.org)での予約が必要。桜井さんは2009年から「キャンサー・ソリューションズ」(東京)の社長も務め、がん患者やその家族に就職先を紹介している。現在、がんへの理解を示す登録企業は15社に広がっている。

 ●ピンクリボン月間 九州各地の主なイベント

 ▼ピンクリボン活動 8日午前10時~午後4時、福岡市西区小戸のマリノアシティ福岡。認定NPO法人ハッピーマンマ(同市)による乳がんの自己検診法の指導など。7~9日は観覧車がピンクにライトアップされる。9日午前10時~午後4時、同市・天神のエルガーラ・パサージュ広場でも同様のイベントを実施。いずれも参加無料。ハッピーマンマ=092(716)7104。

 ▼ジャパン・マンモグラフィーサンデー 15日、認定NPO法人J.POSH(大阪)の呼び掛けで、平日が忙しい女性のために、日曜日に全国の登録医療機関で乳がん検診を実施する。九州では宮崎を除く6県で約60施設が参加。医療機関の一覧はhttp://jms-pinkribbon.com

 ▼市民公開講座「女性がん検診の勧め」 14日午後2~4時、長崎市茂里町の長崎ブリックホール。NPO法人ピンクリボンながさきの内海文子理事長が「乳がんから女性を守ろう‐あなたとあなたの家族のために」と題して講演。入場無料。長崎県看護協会県南支部=095(820)3033。

 ▼さが健康フェスタ2017 21日午前11時半~午後4時、佐賀市兵庫北のメートプラザ佐賀。落語家の笑福亭学光さんによる乳がん啓発落語と講演「笑って、笑って、お元気に」、乳がん検診車の模擬体験など。参加無料。事前申し込みが必要。佐賀県健康増進課=0952(25)7074。

 ▼みんなで語ろう 乳がんのこと 29日午前9時半~11時半、熊本市中央区草葉町の白川公園でウオーキングイベント「歩いて学ぼう 乳がんのこと」。午後0時半~4時、同区上通町のホテル日航熊本で、乳がん経験者の本音トークや、第25回日本乳癌(がん)学会市民公開講座「正しく知ろう 乳がんのこと」。参加無料。講座のみ事前申し込みが必要。申し込みは事務局ファクス=092(712)6262。問い合わせは熊本大病院乳腺・内分泌外科医局=096(373)5521。


=2017/10/02付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]