臓器提供に地域格差 九州37件福岡、長崎に集中 法施行20年「病院の体制支援急務」

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 脳死段階での臓器提供を可能にした臓器移植法の施行から20年。昨年までに423件の提供があったが、九州は37件にとどまり、長崎大病院(7件)など一部施設に集中していることが、西日本新聞の取材などで分かった。県別の最多は福岡12件、最少は大分1件。臓器の機能低下や輸送費の負担もあり、提供施設に近い病院での移植が望まれるが、関係者からは「住む場所で救われる可能性に格差が生じている」として改善を求める声が出ている。

 国が認める提供可能施設は全国に896、うち九州には92ある。あっせん機関の公益社団法人日本臓器移植ネットワークが提供情報の一部を公表しており、そのデータを基に分析、取材した結果、九州で提供したのは15病院のみ。件数も、長崎大病院7、飯塚病院(福岡県)と国立病院機構熊本医療センター、鹿児島市立病院が各3で、他は1、2件に限られていた。

 県別では厚生労働省がまとめており、九州37件の内訳は福岡12▽佐賀2▽長崎11▽熊本3▽大分1▽宮崎4▽鹿児島4-で、いずれも全国平均(13件)を下回った。最多は東京の66件。人口100万人当たりの全国平均3・36件を超えたのも、全国3位の長崎県と、宮崎県だけだった。

 施設側には本人や家族の意思確認、法的脳死判定の手続きなど体制の整備が欠かせない。厚労省の調査では今年3月現在、全国で461施設が「未整備」と回答。長崎県で人口当たりの提供数が多いのは、長崎大病院が脳死状態の患者の家族に対し、病院側から意向を確認する「選択肢提示」に積極的なことも大きい。

 待機者が多い腎臓は、提供施設と同じ県内での手術が優先される仕組みになっている。一方、提供が少ないため専門医が育たず、九州では心臓移植が九州大病院(福岡県)でしか受けられないなど、移植施設にも地域格差が生じている。

 移植ネットによると、移植を待つ患者は8月現在、全国に1万3896人。提供が伸びずに待機年数が長期化し、5774人が途中で死亡している。日本移植学会の江川裕人理事長(東京女子医科大教授)は「提供には3~4日にわたって複数の職員が専従になるなど病院側の負担も大きい。国には体制整備への支援が求められる」と指摘する。

 【ワードBOX】臓器移植法

 1997年10月16日施行。脳死段階での臓器提供、移植について定めた法律で、2度の法的脳死判定などを経れば提供できるようになった。改正で2010年から、本人の意思が不明でも家族の承諾で提供でき、15歳未満も可能となった。最近の提供数は年50人前後と足踏み状態で、15年は人口100万人当たり0・72件(韓国は9・96件、米国は28・5件)。

=2017/10/09付 西日本新聞朝刊=

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