子どもの心臓移植、九州でも実施へ 国内5施設目 九大病院が認定を申請

九州大病院で医師らを対象に開かれた小児用補助人工心臓の研修会。青色の機器が駆動装置で、体外式ポンプに空気を送り込んで心臓の動きを助ける=2017年11月末
九州大病院で医師らを対象に開かれた小児用補助人工心臓の研修会。青色の機器が駆動装置で、体外式ポンプに空気を送り込んで心臓の動きを助ける=2017年11月末
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1995年、九州大医学部卒業。福岡市立こども病院などを経て2008年に渡米。ピッツバーグ大、テンプル大などで心臓移植に携わる。16年から現職。
1995年、九州大医学部卒業。福岡市立こども病院などを経て2008年に渡米。ピッツバーグ大、テンプル大などで心臓移植に携わる。16年から現職。
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 九州大病院(福岡市東区)が11歳未満の子どもの心臓移植手術に向けた準備を進めている。国内5施設目となる移植施設の認定を学会に申請中で、心臓の動きを助ける「小児用補助人工心臓」を導入するなど、患者が数年にわたって移植を待つことができる態勢も整備した。子どもが心臓移植を受けられる病院は大阪より西にはないため、九州の重症心不全患者は転院するしかなく、移植を諦めるケースもあった。学会の審査に合格すれば4月にも認定される見通しで、九州の患者や家族にとっては朗報となる。

 11歳未満の心臓移植ができる施設は、国立循環器病研究センター(大阪府)▽大阪大病院▽東京大病院▽東京女子医大病院-の4施設だけ。(1)成人を含む移植手術の経験(2)小児心臓外科医や小児循環器医らの配置(3)直近3年間で、人工心肺装置を使って心臓を切開する「開心手術」が年平均100件以上(4)子どもや家族の心のケアを担う専門チームの設置-などの条件を満たし、心臓移植・心肺同時移植関連学会協議会が認定した施設だけが手術を行える。

 九大病院は九州唯一の11歳以上の心臓移植実施施設で、これまでに22件を手掛けた。開心手術は年平均335件で、専門医配置などの条件も満たしている。さらに昨年11月、約8千万円かけて小児用で唯一のドイツ製補助人工心臓「EXCOR(エクスコア)」の駆動装置2台(1台はバックアップ用)を購入した。導入は九州初で、全国では8施設目となる。昨夏に申請した移植施設認定は既に書類審査を通過、実地審査を残すのみだ。

 日本臓器移植ネットワークによると、拡張型心筋症などの重い心臓病で移植の待機登録をしている20歳未満の患者は昨年11月末現在、全国に59人。関東や大阪で補助人工心臓を着けたり強心剤を投与したりしながら過ごしている。ただ、臓器提供は少なく、移植を受けられるのは年に数人。このため、数億円の医療費を募金で賄うなどして、米国で移植を受ける人もいる。

 日本小児循環器学会移植委員会の調査では、2012~15年に移植でしか助からない重症心不全の子ども(18歳未満)は九州に11人いたが、移植待機を登録したのは6人。5人はなかなか移植できない現状や転院に伴う経済的負担、保護者付き添いによるきょうだい児の負担などを考慮して断念したとみられる。

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 ●「生きるための選択肢増やしたい」 塩瀬明・心臓血管外科教授

 九州大病院心臓血管外科の塩瀬明教授に、11歳未満の心臓移植施設の認定に懸ける思いを聞いた。

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 子どもの入院は家族の生活に大きな影響を及ぼす。例えば、移植までの数年間、付き添いのために父親か母親が退職や休職を余儀なくされ、家計に響く。大半は母親が付き添うが、きょうだいがいれば養育に支障が出かねない。さらに関東や大阪で入院となると相当な金銭的負担を伴う。ちゅうちょなく待機登録できる家庭はほとんどない。

 九大病院スタッフが研修を受けた国立循環器病研究センター(大阪)には、福岡県の子どもも補助人工心臓を着けて入院していた。遠隔地への転院や、移植を諦めざるを得ない現状を許しているようでは、地域で最先端の医療を提供する施設として恥ずかしいと感じた。

 九大病院が移植施設となり、少しでも自宅近くで治療を完結できる環境を整えたい。子どもたちが生きるための選択肢を増やしたい。

 小児用補助人工心臓「EXCOR」は駆動装置が非常に高額だが、それだけの成果が報告されている。患者が費用負担する体外式ポンプ部分が公的医療保険の適用となった2015年以降、全国で32人が装着し、うち3人は病状が好転して外した。5人は日本で、12人は海外で移植を受けた。12人は今も装着している。数カ月の命とされた子どもたちが装着して延命できれば、治療の可能性が開ける。

 移植までの道のりは平たんではない。臓器提供が少ない日本では移植が必ず受けられるという保証はなく、待機登録と同時に米国での移植に向けて募金活動を始めることが多い。ただ移植費用は約3億円。この10年ほどで3倍に高騰しており、いつまでも海外に頼るのは現実的ではない。

 国内での臓器提供を増やすため、医師としてできる限りのことはする。地域の人たちの議論も喚起したい。


=2018/01/15付 西日本新聞朝刊=

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