がん予防と患者支援 福岡‐札幌 3500キロ歩いて訴え 日本対がん協会会長 垣添忠生さん(76)に聞く

日本対がん協会会長 垣添忠生さん
日本対がん協会会長 垣添忠生さん
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患者団体や医療関係者に見送られながら国立病院機構九州がんセンターを出発する垣添忠生さん(中央)=2月5日、福岡市南区
患者団体や医療関係者に見送られながら国立病院機構九州がんセンターを出発する垣添忠生さん(中央)=2月5日、福岡市南区
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 ●元患者で遺族で専門医 サバイバー・クラブ 「国民運動にしたい」

 日本を代表するがん専門医で元患者、家族をがんで亡くした遺族でもある日本対がん協会会長の垣添忠生さん(76)が、がん予防と患者支援の充実を訴え、約3500キロに及ぶ「全国縦断がんサバイバー支援ウォーク」を展開している。2月上旬に福岡市をスタートし、全国32のがん治療の拠点病院を巡って患者や医療関係者と交流しながら、7月下旬に札幌市でゴールする予定。取り組みの背景と意気込みを聞いた。

 -九州から四国、中国、関西を経て3月から中部地方入り。なぜ歩くのか。

 「がん対策基本法とがん登録推進法が成立、この10年で日本のがん対策は進んだ。予防や治療法の開発が進み、がんは必ずしも死ぬ病気ではなくなったのに、情報は不足し、周囲の理解は進んでいない。患者や家族は不安と孤独感にさいなまれ、がんと診断された経験があるサバイバーは再発の恐怖におびえている」

 「現状を伝えて支援をお願いするには、文書で訴えるより、がんを患いながらも喜寿を迎える人間が体を張って、のぼり旗を掲げて全国行脚した方が、興味のない人にも振り向いてもらえる。途中7回、会合出席などで都内に戻るが、原則1日約30キロを歩き続ける」

 -昨年は協会内に「がんサバイバー・クラブ」を立ち上げた。

 「インターネットの真偽不明の情報に惑わされたり、早まって仕事を辞めたりしないよう、正確な情報を提供して寄り添いたい。サバイバーは国内に推定700万人。大勢に登録してもらい、国民運動にしたい。そのPRと寄付を呼び掛けるためのウオークで、時には各地のサバイバーも合流してくれる」

 -50代後半で大腸がん、60代前半で腎臓がんを患い、66歳のとき12歳年上の妻を肺がんで亡くしている。

 「結腸で1センチ超のポリープが見つかり、切除して病理検査に出したら結果的にがんだった。腎臓がんは検査で見つかり、切除した。腎臓は私の専門だから、画像を見ても『これは治るな』と動揺しなかった」

 「だが妻の死には打ちのめされた。家でみとった後、3カ月間は抑うつ状態になり、泣いては酒を飲み、夜は睡眠剤に頼った。死ねないから生きているという状態だった。共通の趣味だった山登りを再開したり、思いを文章にしたりして前に進めるようになった。昨年まで3年かけて四国八十八カ所霊場を巡り、やっと妻の死を受け止められた」

 -残りの人生を懸けて充実させたいがん対策とは。

 「検診率の向上、サバイバー支援、在宅ケア態勢の整備、グリーフ(悲嘆)ケアの充実。この四つに道筋を付けたい。特にグリーフケアは緩和ケア病棟だけのものであってはいけない」

 「私も最期は自宅で迎えたい。1人暮らしで子どももいないので、周到な準備をと、毎朝1時間かけて腕立て伏せ130回、腹筋500回、スクワット100回…と筋トレやストレッチをしている。家で死ぬために体を鍛える、という矛盾したことをやっています」

    *   *

 垣添さんの足取りはがんサバイバー・クラブのホームページで公開中。

 ▼かきぞえ・ただお 泌尿器科医。東京大卒業後、1975年から国立がんセンター(現国立がん研究センター)に勤務し、同センター中央病院長、同センター総長を経て現職。著書「妻を看取(みと)る日」はテレビドラマ化された。

=2018/03/05付 西日本新聞朝刊=

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