九州大学発AI病理診断 第1号ベンチャーソフト開発 解析数分で費用半分

人工知能(AI)に学習させるために病理組織を画像データ化するMedmainのスタッフ
人工知能(AI)に学習させるために病理組織を画像データ化するMedmainのスタッフ
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「病理画像診断ソフトが実用化すれば患者の負担も減る」と語るMedmainの飯塚統さん
「病理画像診断ソフトが実用化すれば患者の負担も減る」と語るMedmainの飯塚統さん
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 九州大起業部の第1号ベンチャー企業「Medmain(メドメイン)」(福岡市中央区)が31日、人工知能(AI)を使った病理画像診断ソフト「PidPort(ピッドポート)」の試験運用を始めた。国内外の約20の医療機関で実施する予定。医師不足などの問題から、厚生労働省も検討を本格化させた医療分野でのAI活用。社長で九大医学部4年の飯塚統(おさむ)さん(27)は「医療現場で検証し、来年10月には本製品を発表したい」と意気込む。

 病理医は、細胞や組織を顕微鏡で見て病気の有無を判断する。最終的な病名を診断する責任の重さや数多くの症例を学ぶ必要があることから不足している。日本病理学会によると、全国にある400床以上の急性期病院のうち35%で常勤の病理医がいないという。

 病理医がいなければ大病院に診断を依頼するが、結果が出るまでに数週間かかる。飯塚さんは腎臓病を患い病理医診断を受けた経験があり、九大進学後、画像診断事業の可能性に着目。協力病院から提供された細胞や組織の画像を九大のスーパーコンピューターシステム「ITO(イト)」を使ってAIに学ばせている。「数万単位の症例を学習済みで、実用に耐え得る診断精度」と誇る。

 ソフトの使い方は簡単。データ化した病理画像を送信すると、AIが1分ほどで解析し、疑わしい病名や病変の部位を指摘。費用も従来の診断の半額から3分の1程度で済むといい、「試験的に現場で運用し、改善点を探りたい」と話す。

 AIを活用した画像診断には厚労省も高い関心を寄せ、本年度に有識者やIT企業によるチームを設置。来年度予算の概算要求では医療分野のAI開発支援のために、本年度を上回る約18億5千万円を盛り込んだ。厚労省厚生科学課は「病理医不足を補うだけでなく、病変の見落とし率の低下にもつながる」とし、AIによる画像診断を推進する構えだ。

 今年1月に立ち上げた同社も注目を集め、2社から1億円の資金を調達した。飯塚さんは「ソフトが普及すれば、診断結果を待つ不安が軽減されるだけでなく、早期の治療開始にもつながる」。病理診断が行われていないような発展途上国を見据え「世界的な医療の向上に貢献したい」と力を込めた。

=2018/11/01付 西日本新聞朝刊=

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