【聴診記】がん患者の一人一人に合った支援を

 いろんな人がいて、いろんながんがある。連載「がんと働く」(全6回)の取材で、20人近い患者・経験者、家族の話を聞いて、そんな当たり前のことを改めて実感した。

 「Kポップにはまって、しょっちゅう韓国に行っているんです」。9年前に乳がんを治療した女性(61)は、はにかみながら教えてくれた。人生は限りがあると悟り、したいことはすぐやるようになった。ボランティアや資格取得の勉強にも精を出す。

 一方、妻が胃がんで治療中という50代男性は、最善の治療と信頼できる医療機関を探して心身ともに疲弊し、自身も休職中だった。乳がんで治療中の女性(52)からは「子どもたちの学費、自分の治療費で生活は苦しい。パートで仕事復帰したが、副作用で思うようにいかず、ミスばかり、体もきつい。見た目は元気で、健常者として扱われ、何度も辞めようと思った」とのファクスが取材班に届いた。

 国立がん研究センターの統計を見ると、発症部位は胃や大腸など約20あり、2006~08年に診断された人の5年生存率は大腸の97・5%から、膵臓(すいぞう)の7・9%まで開きがある。治療法によって復職後の体調もさまざま。配慮を求める人もいれば、特別扱いを望まず、病名を隠す人もいる。会社員と自営業では必要な支援は異なるだろう。

 「がんに特化した復職支援マニュアルはあえてつくらない」という企業があった。多様性を踏まえ、一人一人に合った支援をするためだ。3度のがんを経験して働き続ける女性(48)は「私たちは切り込み隊」と言った。数が多く、多様ながん患者に配慮できれば、育児や介護、慢性疾患など、どんな事情がある人も働きやすくなるはずだと考えていた。それぞれの言葉が深く胸に刻まれている。

=2018/05/28付 西日本新聞朝刊=

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