精神疾患患者が 地域で暮らすために 受け皿整え、退院支援 福岡・油山病院 在院を100日短縮

就労継続支援事業所でカーステレオの解体に励む統合失調症の男性(中央)
就労継続支援事業所でカーステレオの解体に励む統合失調症の男性(中央)
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 ●住まい確保 サポート充実

 1年以上の長期入院を余儀なくされている精神疾患患者の退院支援に積極的に取り組む病院が、福岡市にある。油山病院(280床)は、地元不動産業者などと独自に信頼関係を築き、退院後の受け皿を整えてきた。取り組みを始めて11年、長期入院患者の退院が増え、平均在院日数を約100日短縮できた。油山病院の試みを取材した。

 週2回、地域のボウリングクラブで汗を流し、メンバーと日帰り旅行も楽しむ。統合失調症の男性(53)は「好きなことを好きな時間にできて、充実した毎日」と笑顔を見せる。

 男性は2016年1月、油山病院を退院し、アパートで1人暮らしを始めた。17歳から約10回も入退院を繰り返してきたが、2年半前に初めて同病院が連携する不動産業者の紹介を受け、病院近くの賃貸住宅に入居できた。

 頼れる家族はいないが、病院職員や地域の支援者にすぐに相談できる環境にあるため「安心できる」と話す。この春から週1回、就労継続支援事業所に通い始め、電化製品の解体や農作業に精を出す。事業所では「真面目」と評価も高い。

 病院は07年、長期入院や、受け入れ先がない「社会的入院」の患者などを対象に本格的な退院支援を始めた。大きな課題だった住まい確保のため、不動産業者に直接協力を求め、数社との連携に成功。「周囲とのコミュニケーションが苦手」「音に敏感」など、患者の特性を理解してもらえる賃貸住宅を確保してきた。

 一方で、地域の支援体制づくりにも力を入れた。15年から2カ月に1回、就労支援事業所や行政機関などと会合を重ねている。メンバーの一人、障害者の生活をサポートする福岡市南区第2障がい者基幹相談支援センターの村中貴輝さん(29)は、病院のソーシャルワーカーらと情報を共有。入院中から患者の希望を聞き、退院後の福祉サービスを調整している。

 16年までの10年間で、こうした支援を受けて退院した191人のうち、男性のような民間住宅入居者は70人と最も多い。油山病院地域医療連携部の内野秀雄課長は「住まいの選択肢が広がり、退院できる人が増えた」と強調する。

 当事者目線で地域づくりに取り組むNPO法人全国精神障害者ネットワーク協議会(福岡県飯塚市)の代表で、統合失調症患者でもある徳山大英さん(60)は「病院が不動産業者を自ら探して連携するのは珍しい」と話す。病院の系列施設を受け皿にするケースは多いが、「地域の住宅で地域と関わりながら生活してこそ本当の意味での退院」と注目する。

 国は04年、精神疾患患者の地域移行を進める方針を明確に打ち出した。20年度末までに1年以上入院している患者を最大で3万9千人減らす目標を掲げる。

 ただ、厚生労働省の調査(14年)では精神病床の入院患者約29万人のうち、受け入れ条件が整えば退院可能な人は5万3千人と、社会的入院は依然として多い。また、16年の精神病床の平均在院日数は大分415・2日が全国で最長。鹿児島361・1日、福岡296・4日など、熊本を除く九州6県が全国平均269・9日を上回る。

 こうした中、油山病院では07年に332日だった平均在院日数が、17年は234日に減った。内野課長は「単身生活が難しそうな患者でも周囲のサポートがあれば生活できる。病院がより積極的に地域の協力者を増やし、スムーズに橋渡しできれば、退院できる患者はもっと多いはず」と指摘している。

=2018/06/18付 西日本新聞朝刊=

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