舌下免疫療法、5歳から可能に ダニのアレルギー性鼻炎治療 半年で効果 アトピーは悪化の恐れも

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 日本人の4人に1人が患っているというダニによる通年性アレルギー性鼻炎。ダニからアレルギー成分(アレルゲン)を抽出して作られた錠剤を毎日摂取して体を慣れさせる「舌下免疫療法」の適用対象が今年2月、12歳以上から5歳以上に拡大された。くしゃみや鼻水、目のかゆみが止まらず、抗ヒスタミン剤などによる薬物療法が効きにくい子どもにとっては朗報だが、副作用も少なくなく、主治医とよく話し合って始めることが必要だ。

 「前はくしゃみが止まらず、毎日、学校にポケットティッシュを10個は持って行っていたけど、今は1個で十分足りる。やって良かった」。2016年8月から舌下免疫療法を続ける福岡市の女子中学生(14)は話す。

 幼い頃から鼻水やくしゃみ、目のかゆみがひどく、ダニやハウスダストによるアレルギー性鼻炎と診断された。抗ヒスタミン剤やステロイド点鼻薬などを併用しても効いている実感はなく、授業に集中できず、夜は眠れないこともしばしばだった。

 当時の適用対象の12歳になって舌下免疫療法を始めると、半年で鼻水が減り始めた。最近は、ダニの死骸が増える秋口など季節の変わり目を除いて症状は落ち着いている。

 最初は副作用もあった。毎晩、錠剤を口に含んだ後の30分間は、喉がいがいがしたり、口の中が腫れぼったくなったり。それでも「いつか鼻炎が治るなら」と続けると、半年ほどで違和感は消えた。あと数年は服用を続ける予定だ。

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 季節性の花粉症と異なる通年性アレルギー性鼻炎の原因の多くはダニの死骸やふん。こまめに掃除や換気をしても治らず、重症者は薬物療法も効かない。アレルゲンを繰り返し摂取して体質を変える免疫療法は、唯一の根治療法だ。従来は皮下注射で、頻繁な通院や痛みに耐えなければならず、受けられる人が限られていた。

 2015年、鳥居薬品と塩野義製薬は錠剤を発売。誤飲の恐れから12歳以上が対象だったが、安全性が確認された今年2月、厚生労働省が対象拡大を容認。5歳から治療が可能になった。

 両社によると、九州では400余りの医療機関で実施。血液検査などでダニアレルギーと判明し、副鼻腔(びくう)炎など他の病気がないことが確認できれば医師の説明を受けて始められる。

 初回の診察時に1錠を服用。院内で30分ほど様子を見て、異常がなければ3日~1週間分が処方される。次回から処方量が増え、慣れれば1カ月ごとの通院で済む。

 服用方法は、舌の下に錠剤を置き、飲み込むのを1~2分間我慢した後、唾液と一緒に飲み込む。5分間は飲食やうがいを控える。薬代は3割負担で月1500~2千円。3年以上服用すると7割の患者に効果があるとされる。

 鳥居薬品によると、これまでに約3万6千人が治療を始め、呼吸困難などの重いアナフィラキシー症状が出たとの報告は3件。そこまで重篤ではないが、治療開始後は多くの人が服用直後にのどのかゆみや口に異物感が出る。それも大半が数カ月から半年ほどで感じなくなるという。

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 アレルギー疾患が専門の国立病院機構福岡病院(福岡市南区)では約70人が舌下免疫療法を受けている。うち今春から始めた12歳未満は約10人。多くは薬物療法で改善せず、生活に支障がある人たちだ。

 耳鼻咽喉科の押川千恵医師によると、これまでに治療を始めた患者の3分の2は、半年ほどで鼻水やくしゃみが減ったり、合併しているアレルギー性ぜんそくや結膜炎が改善したりと、何らかの効果が得られているという。「アレルギー性鼻炎の子どもは増えている。早期治療は鼻炎改善だけでなく、成長するにつれてぜんそくや花粉症を発症する『アレルギーマーチ』を防ぐ効果も期待できる」と対象拡大を歓迎する。

 同病院ではアナフィラキシーなどの重篤な副作用は出ておらず、副作用で治療を中断した人はいない。ただ、重症の気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎を合併している人は悪化の恐れがあり、慎重な判断が必要という。

 押川医師は「子どもは主治医に十分相談した上で、夏休みなどの長期休暇中に治療を始めると、保護者が体調の変化に気付きやすく、通院もしやすい」とアドバイスしている。

=2018/06/25付 西日本新聞朝刊=

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