夏休み明け 増える子どもの自殺<下>悩み相談ならSNSもあるよ 進む窓口開設 熊本や鹿児島など

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 子どもの自殺を防ごうと、日頃から慣れ親しんだインターネットの会員制交流サイト(SNS)を使った悩み相談の窓口づくりが、公的機関でも民間でも進んでいる。文部科学省が3月に始めた補助事業を活用する自治体は30に上り、特に夏休み後半から休み明けに自殺が増えることから、この夏、窓口をスタートさせる自治体もある。担当職員は「夏休み後半から休み明けは、悩んでいる人にとっては重い時期。子どもたちの『誰かに聞いてほしい』という気持ちを掘り起こしたい」としている。

 30自治体のうち、九州は鹿児島県、熊本市、熊本県の3自治体が取り組む。

 鹿児島県は7月18日~9月11日、県立高や公立中などのうち19校の生徒を対象に、SNSのLINE(ライン)による相談を受け付ける。熊本市は8月24日~9月6日、全ての市立中高などの生徒に向け、同様の事業を行う。いずれも委託先の民間業者が運営する。

 熊本県は4月、匿名でいじめを通報できるシステムを本格導入した。全県立高と併設中3校が対象で、生徒はインターネット上で校名を選択し、心配な人や状況などを書き込む。情報は緊急度が3段階に分けられ、県教育委員会経由で学校に連絡が行く仕組みだ。

 自治体の中で、いち早く取り組んだのは長野県だった。昨年9月の2週間、県内の中高生など向けにラインによる窓口を設けたところ547件の相談があり、1年間の電話相談件数の倍を超えた。いじめや不登校など深刻で緊急性が高い内容が多い電話相談と比べ、ラインでは学業や恋愛などの悩みが多く、担当職員は「若者にとって身近なラインだからこそ、悩みの芽を早期に発見できた」と分析。今年は文科省事業を活用し、7月から9月までのうち60日間実施している。

    ◇   ◇

 昨年10月、神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件では、SNSで「死にたい」と発信した人が巻き込まれたとされ、若者が安心して相談できる体制の充実が叫ばれた。こうした状況を受け、厚生労働省は今年3月の1カ月間、13の民間団体とSNS相談事業を実施した。

 その一つ、BONDプロジェクト(東京)はこれまで、街頭を中心に支援が必要と思われる10~20代の女性に声を掛け、自治体の生活保護担当課や弁護士など専門家につないできた。しかしこのSNS相談事業では、予想を上回る6千件を超えるアクセスがあり、うち約4千件に対応できたという。代表の橘ジュンさんは「SNSはあくまで相談の入り口。態勢を整えて何とか実際の支援につないでいきたい」と語る。

 ●ゲートキーパー 身近な人の対応が大切 よく聴き共感する 安心感を与える

 家族や友人など、身近な人が深刻な悩みを抱えていたり、自傷行為に及んでいたりしたら、どう接すればいいのだろうか。

 「命の門番」を意味するゲートキーパー。悩んでいる人に気付いて自殺を防ぐよう働き掛ける人のことで、厚生労働省は具体的な対応例をまとめた「誰でもゲートキーパー手帳」=イラスト=を作成し、ホームページで公開している。

 ゲートキーパーの養成講座を10年以上前から続ける、精神科医で福岡県立大の小嶋秀幹(ひでき)教授は「周囲が良かれと思ってしたことが逆に追い詰めてしまうこともある」と関わり方の難しさを指摘する。心理的危機状態に陥った人との対話では、(1)傾聴・共感(2)状態評価(3)専門家へのつなぎ行動-の三つのポイントがあるという。

 (1)自分の経験や意見を一方的に話したり、叱咤(しった)激励したりしない。穏やかな表情や口調で話し、安心して対話できる雰囲気をつくる。質問は尋問調でなく、ありのまま理解しようと努める。

 (2)身なりに構わない様子や、自暴自棄な発言、自殺願望、判断力の低下などが見られる場合、専門家につなぐ。

 (3)相手との信頼関係ができたタイミングで「あなたの考えと違っていたら申し訳ないんだけど」など、まず謝ってから、つなぎの提案を切り出す。

 小嶋教授は9月6日午後1時半~3時半、福岡市中央区舞鶴のあいれふで行われる「自殺予防の基礎知識と関わり方」に登壇する。同大の大学院生による寸劇を交えた講演会。定員150人で要予約。市精神保健福祉センター=092(737)8825。

=2018/08/21付 西日本新聞朝刊=

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