5年生存率が最も低い「膵臓がん」 早期発見の取り組み、全国に広がる

半年に1回の検診に訪れた徳永カツエさん(左)と新原亨副院長 (写真の一部を加工しています)
半年に1回の検診に訪れた徳永カツエさん(左)と新原亨副院長 (写真の一部を加工しています)
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 沖縄県知事だった翁長雄志(おながたけし)さん、元プロ野球選手・監督の星野仙一さんらの死因となった膵臓(すいぞう)がんは、がんの中で最も5年生存率が低い。見つかりにくく、発見された時には病状が進行し、切除できないケースが多いためだ。膵がんを早期に発見する取り組みが、広島県尾道市を起点に全国に広がりつつあるという。九州で「尾道方式」に取り組む鹿児島市の南風病院(338床)を取材した。

 手術から4年。半年に1回の定期検診で、今回も異常はなかった。鹿児島県霧島市の徳永カツエさん(80)は2014年8月、膵がんの疑いで南風病院を受診し、小さながんが見つかった。

 大きさは11ミリ×7ミリで、初期のステージ1b。9月には膵頭、十二指腸、胆のうや胆管を切除する手術を受けた。抗がん剤治療は必要なく、約1カ月で退院。その後も1人暮らしを続け、月1回は福岡市に観劇に訪れ、来月は北欧を旅する予定もある。「動いていないと気分が悪い」と言うほど元気だ。

 徳永さんは09年と13年に患った乳がんの定期検診(3カ月に1回)を別の病院で受けていた。コンピューター断層撮影(CT)で膵臓にのう胞があり、腫瘍マーカーが高かったため、南風病院への受診を促された。検査を受けた病院が「膵臓がん早期発見プロジェクト」に参加していたことが功を奏した。

 主治医の新原亨副院長は「こんなに早く見つかる人はめったにいない」と笑顔で見守る。

 国立がん研究センターの統計によると、14年に新たに膵がんと診断された人は男性約1万9千人、女性約1万7千人。男女とも42人に1人が生涯に経験する割合となっている。5年生存率は7~8%と、胃がん(65%前後)、大腸がん(70%前後)などと比べ、極めて低い。

 一方、日本膵臓学会のデータによると、ステージ1で見つかれば5年生存率は52・5%。大きさが1センチ以下だと約80%という報告もあるなど、早く見つかるほど生存率は上がる。

 このため、南風病院は14年、広島県尾道市をモデルにプロジェクトをスタート。膵がんの家族がいる▽糖尿病の発症から3年以内▽喫煙▽黄疸(おうだん)-などの危険因子が二つ以上当てはまる人に対し、積極的に腹部エコー(超音波)検査を行うよう、周辺の医療機関や健診施設などに呼び掛けた。

 エコー検査で2・5ミリ以上の膵管拡張、5ミリ以上の膵のう胞などがあれば、南風病院を受診してもらう。膵臓や胆道を磁気共鳴画像装置(MRI)で撮影する検査で精査。膵管の中断、膵のう胞などがんを強く疑う所見があれば、さらに超音波内視鏡検査で腫瘍を確認し、組織検査などで診断を確定する。

 膵がんと診断されれば治療を開始。がんではなかった場合も、高リスクの患者として病診連携でしっかりフォローしていく。9月現在、登録患者は913人、連携施設は55施設に上る。

 この結果、手術可能な症例はプロジェクト開始前の4年間(10~13年)は9例だったが、開始後(14~17年)は35例と4倍。ステージ1は1例が6例に、うち大きさ12ミリ以下の症例は0から5例に増えた。

 南風病院ではエコー検査は1590円、MRI検査は7370円(いずれも3割負担、検査費用のみ)。新原副院長は「膵がんを克服して元気に過ごしている人が少しずつ増えている。エコーは体の負担も少なく、簡単にできるので、受けたことがない人や危険因子が二つ以上当てはまる人は年に1回、受けてほしい」と呼び掛ける。

 モデルとなった尾道市ではJA尾道総合病院と市民病院を中核施設として07年から、市医師会と連携して取り組みを始めた。

 中心となっているJA尾道総合病院消化器内科の花田敬士診療部長によると、昨年6月末現在、かかりつけ医などによるエコー検査で延べ1万2307例の膵がん疑いを発見し、延べ555例が膵がんと診断された。このうち、ステージ0が24例、ステージ1は40例。3年生存率は06年の7・4%から10年は20・5%に向上した。

 同様の取り組みは、南風病院以外にも大阪、山梨、神奈川などに広がり、一定の成果が上がっているという。尾道市では健康診断で腹部エコー検査を実施するようになった。

 花田部長は「市民やかかりつけ医に膵がんのリスク因子が浸透し、定期的なエコー検査が広がれば、膵がんで命を落とす人を減らせる」としている。

=2018/10/15付 西日本新聞朝刊=

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