過眠症 怠け者の偏見 日中に突然強い眠気 試験や会議でも 根本治療なく 患者団体「気軽に相談を」

久留米大 内村直尚教授
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特発性過眠症の女性は公共交通機関で席を譲るなどの援助を求める「ヘルプマーク」を携行していた
特発性過眠症の女性は公共交通機関で席を譲るなどの援助を求める「ヘルプマーク」を携行していた
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「研修や会議中にも耐えられない眠気に襲われた」と語る女性=2月下旬、大分市
「研修や会議中にも耐えられない眠気に襲われた」と語る女性=2月下旬、大分市
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 春の陽気に誘われ、ついうとうとする季節がやってきた。夜に十分な睡眠を取っているのに、昼間に強い眠気に襲われてしまう。実は、そんな病気があるのをご存じだろうか。睡眠障害の一つ「過眠症」のうち、ナルコレプシーや特発性過眠症と呼ばれる疾患だ。症状が出ると、試験や会議など重要な場面でも眠ってしまうが、社会の認知度は低く、周囲から「単なる怠け者」と思われがちだという。患者たちは病気への理解を求めている。

 睡眠障害に詳しい久留米大の内村直尚教授(睡眠医学)によると、ナルコレプシーと特発性過眠症の患者は、夜間に7~8時間の睡眠を取っていても、日中に強い眠気を何度も感じ、突然寝てしまう。主に10代半ばで発症し、症状は生涯にわたって続くという。睡眠不足症候群と違って、一年を通じて眠気を感じない日が1日もない。

 睡眠時は通常、脳が休息する「ノンレム睡眠」と体を休める「レム睡眠」を交互に繰り返す。健康な人であれば、睡眠直後にノンレム睡眠状態になるが、ナルコレプシー患者は早期にレム睡眠状態に移行し、入眠時に幻覚を見たり、金縛り状態になったりするのが特徴だ。喜怒哀楽で感情が高ぶった際に身体の力が抜ける「情動脱力発作」が現れる人もいる。

 有病率はナルコレプシーが500~千人に1人で、日本は世界でも高い。特発性過眠症の有病率は分かっていない。日中の強い眠気のほかに特徴的な症状がなく、診断の確定が難しいことが背景にあるという。

 ともに根本的な治療法はなく、患者は眠気を軽くする薬を常用する。内村教授は「薬を服用すれば、学校や職場など社会生活にもある程度対応できる。受験や就職試験を控えている人は、早めに診察を受けてほしい」と呼び掛ける。

 患者はどんな生活を送っているのか。特発性過眠症と診断された大分市の女性(26)は「物心ついた頃から、私は単によく眠るタイプなんだと思っていた」と振り返る。

 学生時代、自宅できちんと睡眠を取っていても、授業中は必ず居眠りしてしまった。合唱部の歌の練習中に立ったまま眠ったり、試験中に意識が飛んだりすることもしばしば。それでも当時は「よく眠るのはいいこと」と考えていた。

 過眠症を初めて知ったのは大学生の頃。ゼミの途中で眠ってしまい、担当教員から「もしかして過眠症ですか」と聞かれた。「少し疲れているだけ。病気のはずがない」と聞き流していたという。

 ところが、東京のソフト開発会社に就職し、支障が出始めた。研修や顧客との会議で居眠りを繰り返し、パソコンの前で片肘を付いて寝ている姿を上司に注意された。受診を勧められ、睡眠外来で検査すると「過眠症」と診断された。

 「ショックだったけど、自分の意志が弱くて居眠りしていたわけじゃないと分かって、気持ちが楽になった」。女性は複雑な心境を打ち明ける。

 以来、薬を服用しながら仕事を続けたものの、残業で帰りの遅い日が続くと、どうしても眠気を抑えられなくなった。「サボりだと思われているかも」。同僚の視線が気になり、うつ病を発症。そのまま休職し、1年後に退職した。

 女性は今、新たな就職先を探している。就職活動で過眠症だと伝えると「うちではカバーできる自信がない」と内定を取り消されたこともある。「過眠症は認知度が低く、外見も健康な人と変わらない。なかなか苦労を分かってもらえないんです」

 ナルコレプシーや特発性過眠症の患者でつくるNPO法人「日本ナルコレプシー協会」の駒沢典子理事は「過眠症への理解は進んでおらず、専門的に治療できる医師も全国に30人程度と少ない。患者への支援制度はほとんどない」と訴える。

 同協会は、全国の中学校向けに啓発パンフレットを配布し、患者同士の交流会や情報交換、電話相談も続けている。駒沢理事は「特有の症状は患者同士でないと理解できない点もある。気軽に相談してほしい」と語った。同協会=047(718)1858。

=2019/03/17付 西日本新聞朝刊=

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