綾の照葉樹に託した志継ぐ 伐採危機救った郷田前町長 生誕100年目 20日、生前映像で「講演会」 [宮崎県]

生誕100年目を迎える故郷田実さん=1998年10月、宮崎県綾町
生誕100年目を迎える故郷田実さん=1998年10月、宮崎県綾町
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綾町の照葉樹林と照葉大吊橋
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 国内最大の規模を誇る宮崎県綾町の照葉樹の森を愛し、伐採の危機から守った前町長の郷田実さん(1919~2000)が生まれて100年目を迎える26日を前に「郷田実生誕100年記念講演会」(実行委員会主催)が20日、宮崎市で開かれる。「綾町のまちづくり」と題して、在りし日の郷田さんの講演を撮影したビデオ映像を流すもので、実行委は「地方創生がキーワードになっている今だからこそ、地方から未来を先取りしてトレンドをつくった郷田さんの思いに触れてほしい」と呼び掛けている。

 郷田さんは1966年から6期24年間、町長として地域をリードした。就任2カ月後、現在の照葉大吊橋(てるはおおつりはし)周辺に大規模伐採計画が持ち上がった。ヒマラヤ南麓から中国、日本へ半月弧状に分布する照葉樹林帯だ。

 カシやシイなどの照葉樹林が生育する地域は豊かな土壌が育つとされ、みそやしょうゆなど同じような生活文化が広がっている。「照葉樹林は豊かな日本文化を生んだ。あの山を残さにゃならん」が持論だった郷田さんは「大自然の中で生まれた文化をまちづくりの核に」と関係者を説得し、国にも働き掛けて伐採を阻止。その後、有機栽培、伝統工芸の町として綾町を全国ブランドに押し上げた。

 郷田さんが亡くなった後、志は住民に引き継がれ、2005年から行政と連携した照葉樹林の保護と復元に取り組む「綾の照葉樹林プロジェクト」がスタート。この取り組みが評価され、12年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)から綾ユネスコエコパークに認定されている。

 講演会は、郷田さんを慕う町民有志が企画。1998年に録画された映像を基に編集。「なぜ照葉樹の森だったのか」「有機農業にかけた思いは」などのまちづくりの理念を、スクリーンから郷田さん本人が語り掛ける。実行委員長の小川渉さんは「国主導でなく、本当のまちづくりに取り組んだ郷田さんの話に耳を傾けてほしい」と話す。

 ビデオ講演の後、照葉樹林に詳しい元東京大大学院教授の大沢雅彦さんや地域経済専門の宮崎大准教授、根岸裕孝さんら講師4人が、照葉樹林の保存やまちづくりについて解説する。

 記念講演会は20日午後7時、同市のメディキット県民文化センター(県立芸術劇場)で開演。参加費千円。

=2018/09/02付 西日本新聞朝刊=

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