ひょっとこ踊りファン急増中 過去最多7万5000人見学 [宮崎県]

ひょっとこのお面姿で踊りを披露する参加者。ひょうきんな動きが笑いを呼んだ
ひょっとこのお面姿で踊りを披露する参加者。ひょうきんな動きが笑いを呼んだ
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「キツネ」と「おかめ」の踊りもあった=JR日向市駅前
「キツネ」と「おかめ」の踊りもあった=JR日向市駅前
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パレードには芸人「ひょっこりはん」のお面姿の「ひょっとこはん?」も登場
パレードには芸人「ひょっこりはん」のお面姿の「ひょっとこはん?」も登場
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 過疎化などで祭りや伝統行事が各地で消滅や存続の危機にある中、宮崎県日向市発祥の「ひょっとこ踊り」がファンを増やしている。毎年夏には地元で祭りがあり、今年は過去最多の約7万5千人が訪れた。ひょっとこ、おかめ、キツネのお面姿でユーモラスに踊る姿は見ても演じても楽しいとか。その魅力を探った。

 今年の祭りは8月3、4日。最終日は市内を踊って練り歩くパレードがあった。踊り会場の一つ、JR日向市駅前ではパレード開始前から笛、鉦(かね)、太鼓のにぎやかな音色が響いた。

 テンテコテン、テンテコテン、テンテコテンテコテンテコテン-。

 軽快な囃子(はやし)に誘われ、ひょっとこのお面をかぶって踊りを学べる体験会に参加した。伝統的な踊りを継承する「橘ひょっとこ踊り保存会」の会員が丁寧に指導してくれた。

 膝を曲げ中腰状態で右足を前に。「テンテコテン」の伴奏で右膝を高く上げ、下ろすと同時に左足を前に出す。その間、前足と連動して左腕は肘を伸ばして前に突き出し、右肘は曲げる。次に前に出す右足に応じて左右の腕の動きも逆になる。その動作を繰り返すのが基本。首を振り、腰をくねくねさせる動きを加えると実にユニークだ。

 うまく踊れずに地元で養豚業を営む保存会の高橋安光副会長(61)に個人レッスンを受け、ようやく形になった。日頃の運動不足のため、わずか数分ほどの踊りでも汗が噴き出し息が上がる。「簡単な動きだけど難しい。だいぶ覚えたな」。最後はほめてもらった。

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 午後6時からのパレードは桟敷席(2500円)に陣取ってカメラを構えた。

 今年は踊り手の団体が北海道から鹿児島まで、過去2番目に多い116団体、計2216人が参加。地銀などの企業や病院、園児や小中高生のほかに、お堅いイメージの自治体や警察の職員もいてさまざまだ。

 踊りのお面はひょっとこ以外にも、おかめとキツネがある。市内の踊り発祥の地、永田地区にはそのルーツの民話が伝わる。村で評判の美人「おかめ」と「ひょう助」の夫婦が子供を授かるため稲荷神社に通っていると、ご神体のキツネが横恋慕。おかめの気を引こうと踊りだし、それにつられておかめや村の若者も踊るという筋立てだ。

 パレードでも三つのお面が登場。しっぽを付けたキツネがおかめを誘い出し、そこへ、ひょっとこが続く。全員が豆絞りの手ぬぐいを頬かぶりし、おかめは赤い着物に白い帯を身に付ける。ひょっとこ面は口をすぼめたり、口を大きく開いたり、頬を赤らめたりと多彩。その滑稽な表情とエロチックなしぐさが笑いを誘った。

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 祭りには、地元に次いで愛好家が多い福岡県からも16団体268人が参加した。福岡都市圏に会員約70人がいる「日向ひょっとこ踊り博多愛好会」(福岡県那珂川町)は19回目の出場。会長の八藤丸彰さん(69)が、20年前に博多どんたく港まつりで見たひょっとこ踊りに感激して活動を始めた。

 仲間と老人ホームで踊る慰問活動もしている八藤丸さんは「見ている人に喜んでもらえると元気が出てくる」と話し、滴り落ちる汗を満足そうに拭った。

 指導を担当してくれた橘ひょっとこ踊り保存会は、2010年に宮崎県を襲った家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)の支援の恩返しに、東日本大震災後の11年9月に宮城県と岩手県を訪問。被災者と一緒に踊り、台湾などでも公演した。そんな実績が九州にとどまらず、全国や海外にひょっとこ踊りの輪を広げているようだ。

 祭りの実行委員会の岩本倫尚委員長(41)は「シンプルなのに奥が深く、また、踊り名人のファンがいて見ても楽しいのがひょっとこ踊りの魅力」という。明るく楽しく健康的な踊りだけに、まだまだファンの裾野は広がりそうだ。

 ひょっとこ踊り 明治時代に日向市永田地区で眼科医をしていた橘公行が、江戸時代の「里神楽」を元に考案。地元の青年たちが五穀豊穣、商売繁盛、子孫繁栄を祈願して踊りを継承してきた。祭りは1984年に始まり、名称は「日向ひょっとこ夏祭り」。実行委員会は踊りの技能向上と交流拡大を目的に3月と7月の年2回、地元で県内外の市民や愛好者を対象に講習会を開いている。「橘ひょっとこ踊り保存会」が指導する。参加費は無料。年末か年明けに実行委のホームページなどで案内する。問い合わせは実行委事務局(日向市観光協会内)=0982(55)0235。

=2018/09/04付 西日本新聞朝刊=

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