高千穂の記憶、住民つづる 文芸誌「かなたのひと」創刊 13人の随筆、高山さん編集 [宮崎県]

文芸誌「かなたのひと」の責任編集を務めた高山文彦さん
文芸誌「かなたのひと」の責任編集を務めた高山文彦さん
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 地域の風習や日々の営みを住民自ら書き残そうと、高千穂町など宮崎県北部山間地域の記録文芸誌「かなたのひと」が創刊された。同町出身のノンフィクション作家、高山文彦さん(60)が責任編集を務め、住民ら13人が随筆を寄稿。年1回ペースで刊行し、文芸による地域づくりを目指す。

 高山さんによると同地域の記録文芸誌は初。創刊したのは、2005年に高千穂を襲った台風災害を機に復興に取り組む住民たちの集まり「山参会(さんさんかい)」。16年にNPO法人化し、文化講演会や住民への聞き取りなどを実施してきた。

 昨春、理事長の高山さんが記録誌作りを呼び掛け、20~80代の住民や出身者が原稿を寄せた。創刊号はA5判約160ページで、千部を発行した。

 農業者、介護福祉士など文筆を専門としない人が多く、ラーメン店主の50代男性は何度も書き直しながら仕事の合間にスマートフォンで原稿用紙約20枚分の文をつづった。

 半世紀前の鉱毒事件がきっかけで夫と知り合って同町土呂久地区に暮らす50代女性や、神楽に出合ったことで移住して神職に就いた30代女性、酒の寒造りを代々守る80代男性…。それぞれの人生から高千穂の歴史と現在が浮かび上がる内容となった。

 高山さんは同誌が住民の文章教室の場でもあるとし、「文章にすることで想像力が鍛えられ、地域の向こうまで見渡せる」と語る。

 誌名の「かなた」は高千穂・押方(おしかた)地区の古い呼び名で、辺境の意味も込めた。ほとんど東京向けに書かれた大手出版社の雑誌とは一線を画し、今後も住民から執筆者を募り、随筆に限らず小説や絵など総合的な文芸誌にしたいという。高山さんは「中央の考えではくくれない時代になっている。自分たちの言葉と感受性で、普通の人の吐息のような文章を書きつづっていきたい」と話している。1部1080円。編集部=kanatanohito2019@gmail.com

=2019/01/30付 西日本新聞朝刊=

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