かつての鉱害被害地 土呂久に満開の桜 夫婦で植樹100本 高千穂町 [宮崎県]

「この辺りの桜から植え始めたんです」と振り返る盛実弘行さん=4日午後、宮崎県高千穂町
「この辺りの桜から植え始めたんです」と振り返る盛実弘行さん=4日午後、宮崎県高千穂町
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 多くの慢性ヒ素中毒患者を出した旧土呂久鉱山(宮崎県高千穂町岩戸)の周辺で桜が満開となっている。被害告発から半世紀近くたち、当時は草木も生えず殺伐としていた山肌は今はすっかり緑に覆われ、薄いピンクの桜約100本が鮮やかに浮かび上がっている。

 この桜を四半世紀にわたって夫婦で植え続けてきたのが、近くに住む盛実(もりざね)弘行さん(87)。若い頃は、家族で社宅に住み、鉱山作業員として働いていた。やがて閉山となり、被害者の裁判闘争も終わった25年ほど前のことだ。退職していた盛実さんは、妻セサ子さんから「花を植えようか」と声を掛けられた。森林組合から仕入れた桜の苗をまず20本ほど植えた。「まあ、いいか」と軽い気持ちで始めた夫婦の植樹だったが、毎年3、4本ずつ地道に増やしていった。

 セサ子さんは4年前に84歳で亡くなり、その年から電動シニアカーで移動するようになった。もう植樹は体力的に無理だ。それでも、シニアカーで日々、木々を見て回り、成長期の苗木には肥料をかけていく。

 集落を流れる土呂久川の両岸を埋めた桜並木は、地元住民の花見の場となっている。盛実さんは「この光景を、妻が一番喜んでいるはず。地元の人が大切に思ってくれて幸せです」と話す。

=2019/04/05付 西日本新聞夕刊=

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