九州屈指の渋滞路、対策は 「駅前」降りられぬ車いす [長崎県]

長崎駅前のバリアフリー・交通アクセス見直し状況
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九州屈指の交通渋滞地点とされるJR長崎駅前の国道202号
九州屈指の交通渋滞地点とされるJR長崎駅前の国道202号
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 80歳の松本アヤ子さんは手押し車を抱え、JR長崎駅と路面電車の電停をつなぐ陸橋を上る。37段。肩で息をして、汗を拭った。「いつも大変。本当にきつい」。月に数回、自宅のある諫早市から列車と路面電車を乗り継ぎ、長崎市の商店街に買い物に行く。いつか階段を上れなくなるのでは、と不安が募る。

 長崎駅前に張り巡らされた陸橋は1969年に設置。約半世紀を経て、九州屈指の交通渋滞地点となっている駅前のアクセスを見直す議論が、ヤマ場を迎えている。

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 駅前の国道202号は上下合わせて9本の車線と路面電車のレールも走る。駅に最も近い信号付き横断歩道は数分歩いた所にしかない。電停には陸橋の階段を使う必要があり、車いすの利用客は駅前電停では事実上、乗り降りできない。

 関係機関への苦情はほとんどない、という。多くの市民にとって不便が日常だ。しかし2022年度の新幹線開業を機に、交流人口を増やしたい市にとって、駅前の大規模な再開発とともにバリアフリー化は必須。昨春、警察や県などとの協議が本格的に始まった。

 「これでは駄目ですね」。4月、県警の交通担当者の答えは明快だった。市の案は、駅前に国道を横断する平面歩道を敷き、一部陸橋を撤去、電停にエレベーターを設置するというもの。1年以上協議しているが調整は難航する。

 県警の立場はこうだ。国の調査では、駅前の1日交通量は1999年に九州1位、2005年も2位。通行者の安全確保、道路の渋滞緩和という使命を考えると「陸橋が理想」(県警交通規制課)。エレベーターは容認できるが、約2メートルの電停の幅を現在より広げる必要がある。これには国道を管理する県が反対する。「車道と歩道をずらさないといけなくなる。それでは沿道の建物に引っ掛かる」(県道路維持課)

 市側は路面電車を運行する長崎電気軌道に対し、バリアフリーによる新たな駅前電停の設置を呼び掛けたが「採算が合わない」として断念に至った。

 市は夏ごろには具体案を示す考えだが、議論の「渋滞」が解消されるかは見えない。

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 市の担当者は昨年12月の市議会特別委員会で「現状の交通量のままでは、横断歩道の実現は難しい」と答弁。断念したようにも聞こえるが、市はいま、駅前の交通量を分散させる方策をひねりだそうと懸命になっている。

 市が案にこだわるのは、大型コンベンション施設や新幹線開業で駅前に集まった客を周辺に誘導させる狙いがあるからだ。例えば、駅から国道をはさんだ場所にある殉教の地「日本二十六聖人記念館」(長崎市西坂町)。宗教弾圧のため、1597年に外国人宣教師や日本人信徒26人が処刑された。「世界から人を呼べる聖地だが、生かし切れていない」と市関係者は語る。

 「さるく」と呼ばれる町歩きが命の長崎市観光。各地で見られる「駅ビル独り勝ち」の状況は避けたい思いが、透ける。

=2017/06/20付 西日本新聞朝刊=

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