波佐見に移住、開窯10年 おしゃれな食器で人気「松原工房」来春で幕 女性2人、それぞれの道へ [長崎県]

移住から約10年、意欲的な創作活動を続けてきた奥田容子さん(左)と太田祐子さん
移住から約10年、意欲的な創作活動を続けてきた奥田容子さん(左)と太田祐子さん
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 波佐見町に移り住んで約10年、女性2人で日用食器を創作してきた人気窯元「松原工房」が来春解散する。関西出身の奥田容子さん(43)と太田祐子さん(41)が過ごした年月は、陶芸の里を挙げての取り組みで「カジュアルでおしゃれな生活食器」として波佐見焼の人気が高まった時期と重なる。2人は10年を節目に「波佐見は次の段階に移る」と考え、それぞれ新たなステージへ進む。

 京都の美術系大学や佐賀県の有田窯業大学校などで陶芸を学んだ2人。デザイン・絵付けを奥田さん、ろくろ・窯を太田さんが担う分業体制で生み出す作品には今、多くのファンがいる。波佐見焼の伝統技術を大切にした成形と、優しい色合いのモダンなデザインが特徴だ。

 窯を開いた2008年は長い焼き物不況を経て、移住者やUターンの若者が町に新風を吹かせ始めていた。製陶所跡にはカフェやギャラリーが開店、人気観光地となった。古くからの窯元の後継者世代は独自イベントを企画。観光客は年々増え、大型連休中の陶器まつりには昨年、過去最多の約32万2千人が訪れた。

 「これからの10年をどうするのか。町のみんなも考えているはず」と奥田さん。窯元では年長者が現場を去り、後継者への世代交代が進んでいる。波佐見人気の高まりをどう今後に生かすのか関係者は思い悩む。

 「移住者は選択を迫られている。ここに根付くのか、それとも新しい土地を開拓するのか」と感じた2人。太田さんは前者、奥田さんは後者を選んだ。太田さんが2月に波佐見焼のろくろ(成形)では女性で初めて、伝統工芸士に認定されたことも2人の決断を後押し。太田さんは成形と素焼きの外注を受ける「生地屋」になると決めた。生地屋は後継者不足が深刻で「移住してから、好きにやらせてもらった。これからは恩返ししたい」。

 奥田さんは「新しい風を吹かせた」という達成感もあり、北海道下川町へ家族で移住する。森林が面積の90%を占める人口約3千人の町で、陶芸の技術も生かした新たな道を探る。

 波佐見町折敷瀬郷の工房は「第60回波佐見陶器まつり」で盛況だ。今回が最後の陶器市になる見込みで、2人は「多くのお客さんや地域の方に楽しんでほしい」と話している。松原工房=0956(85)6116。

=2018/05/01付 西日本新聞朝刊=

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