平成納めの長崎くんち こだわりが呼ぶ「感動」 [長崎県]

勢いよく回される出島町の阿蘭陀船
勢いよく回される出島町の阿蘭陀船
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酒に酔っ払う姿を演じる小川町の子どもたち
酒に酔っ払う姿を演じる小川町の子どもたち
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大黒町の唐人船で囃子を奏でる子どもたち
大黒町の唐人船で囃子を奏でる子どもたち
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本古川町の見せ場の寸止め
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華やかな舞で観客を魅了する紺屋町の本踊
華やかな舞で観客を魅了する紺屋町の本踊
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 「まだまだ阿蘭陀船(おらんだぶね)は早くなる。満足したら駄目だ」。かつて船を指揮した飯田勝年さん(74)は取材に熱く語った。初めて出島町の阿蘭陀船を見たのは9月の初旬。囃子(はやし)の音色はもちろん、力強く美しい船回しに心を奪われた。スピードも十分。「これ以上どうにかなるのだろうか」。内心そう思っていた。

 7日の諏訪神社での奉納で、船はさらに早くなっていた。直前のゆったりとした「オルゴール回し」が引き立ち、さらに美しく見えた。近くで写真を撮っていた同僚記者も「風を感じた」と表現した。

 取材を始めた当初、長崎くんちがなぜこれだけ人の心を引きつけるのか理解できなかった。どの踊町(おどりちょう)も船の重心や囃子のちょっとした乱れ、何度も修正をかけては稽古を繰り返す。そのこだわりこそが、巨大な船を高速で動かし、1トンの山車を宙に浮かせ、観客を感動させる。

 くんち好きは3日間の奉納が終わっても、決まって酒席でくんちを「さかな」にするという。しかも自分の次の踊町の当番が回ってくるまでの7年間、ずっとだ。まさに人生をかけた奉納。後日(あとび)までの2日間、背筋を伸ばして見届けたい。

   ◇    ◇

愛らしさにわしづかみ

 今年の七つの踊町のうち、小川(こがわ)町、本古川町、東古川町、椛島町を取材した。市民の多くが椛島町は「格別」と言ったが、最初はなぜか分からなかった。

 「おとこ気がある」「本気度が違う」。いつもそう聞かされるものの、納得できなかった。他の踊町と練習量も迫力も変わらない。私が見た他の町も勇壮で、女性たちはみんな献身的だった。

 参加させてもらった椛島町の宴席で、2人の担ぎ手に参加する理由を聞くと、「一度参加すると癖になる」と声をそろえた。1人は「前回の参加で踊町の仲間が家族のような存在になった」。もう1人は、2004年の参加で待望の子どもができたという。御利益もある、というわけだ。

 この町に参加できる条件に「ほかの踊町に参加したことがない」という特殊なルールがある。そこで重ねた苦しい稽古の代わりに、かけがえのない友人と自信を得る。そして7年に1度、その結束を再確認する。伝統を重んじる長崎くんちの中でも際立つ「男臭さ」が魅力なのか…。少し分かり始めた気もするが、個人的には小川町の酔っ払う子どもたちの愛らしさに心をわしづかみされている。

=2018/10/08付 西日本新聞朝刊=

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