平戸・離島の港町、魅力増す 的山大島・神浦 重要伝統的建造物地区選定から10年 [長崎県]

修復された家屋の特徴を説明する米村伍則さん
修復された家屋の特徴を説明する米村伍則さん
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修復家屋の柱の寸法を測り、墨付けをする丸田圭介さん
修復家屋の柱の寸法を測り、墨付けをする丸田圭介さん
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 平戸市の離島、的山(あづち)大島の神浦(こうのうら)の町並み21・2ヘクタールが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されて10年になる。選定以来、住民は保存地区の活用やまちづくりに取り組んできた。町並みを歩き、関係者に課題を聞いた。

 神浦が選定されたのは2008年6月。離島の港町の歴史的風致を残し、中世末期から江戸初期にかけて成立した漁村集落が、鯨組の創業と廃業を経て近世的な港町に変容した姿を今日に伝えていることが評価された。他に離島で選ばれたのは新潟県佐渡島や沖縄県竹富島、渡名喜島の3カ所しかない。

 神浦町並み保存会事務局長の米村伍則(いつのり)さん(72)の案内で保存地区を歩いた。課題を尋ねると「設計技術の確立、統一化ですよ」と即答。「伝統工法にのっとって仕上げ、各棟を往時の姿そのままに戻してもらわないことには、ちぐはぐな建物になる」。口元をゆがめながら、すり上げ戸であるべき箇所が引き戸になった家屋などを示した。

 地区の氏神、天降神社下では「あづち大島重伝建作事組」の大工、丸田圭介さん(50)が1人で家屋を修復していた。

 「多くはシロアリにやられとって大変です」と苦笑しつつ「ここで作業しよったら昔の棟梁(とうりょう)と対話がでくる。仕口の形に悩むと『こがんせろ』と答えの返ってくるとですよ」。磨き上げた腕に郷土愛をまぶし、数カ月後、その家屋は昔日の面影を取り戻すのだろう。

 住民は修復物件をコンサートや小学生の郷土学習に活用している。スギが少ない島の特性を生かし、花粉症の人向けに「避粉地体験セラピー」と題したツアーを企画するなど、島のPRにも工夫を凝らしている。

 平日は人通りがほとんどないが、主に週末に訪れる旅行者からは「町並みや自然、食事、素朴なもてなしが魅力的」と好意的な感想が寄せられるという。

 多くの家屋が持つ屋号の木札も関心を集めている。関東屋、淡路屋、肥後屋、綿屋、樽屋、櫓(ろ)屋、観音丸。地名、職名、船名などに由来する屋号は時空を超えた旅へいざなう。丸田さんが修復していたのは菓子屋だった。

 9月30日に予定されていた選定10周年記念の観光クルーズは、台風接近のため中止になったが、受け付け開始から数日で定員150人が埋まった。離島にある貴重な町並みは、着実に人を引きつけている。

=2018/10/11付 西日本新聞朝刊=

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