平戸舞台の歴史小説発表 清張賞作家・川越宗一さん オール読物に「海神の子」 鄭成功の母主人公 [長崎県]

9月に鄭成功記念館を取材した川越宗一さん(右)
9月に鄭成功記念館を取材した川越宗一さん(右)
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 今年の松本清張賞を受賞した作家、川越宗一さん(40)の平戸市を舞台にした新作短編「海神(かいじん)の子」が、小説誌「オール読物」の12月号に掲載されている。川越さんは9月、県の事業「描いてみんね!長崎」を活用して平戸を訪れ、取材をしながら作品の構想を膨らませていた。

 「海神の子」は江戸時代初期に平戸で生まれ、台湾に渡って中国や台湾の民族的英雄となった鄭成功(ていせいこう)(1624~62)の母、田川マツを主人公とする400字詰め原稿用紙約80枚の歴史小説。作中のマツは「松」の名で、刀剣使いの腕を持つ気丈な船乗りとして描かれている。

 《松は、まぶしく暑い初夏の海の上にいる》

 物語は明の貿易船が平戸島の川内浦を出て、長崎へ向かう場面で始まる。船上は男ばかり。松は男よけのため、常に悪臭を放つジャコウネズミを懐にしのばせていた。

 オランダ東インド会社の船と洋上で遭遇すると、果敢に一番やりで戦い、負け知らず。松浦家の館を襲撃するときなど、味方の度重なる背信行為に巻き込まれながらも松は生き延びる。

 途中でもう一人、温厚な性格の「マツ」が登場する。この設定について、担当編集者の川田未穂さんは「作家の想像力が分裂し、統合し、2人になったということ。そうした飛躍も読みどころです」と説明する。

 《さまざまな人々が、出自を問われず平戸の港で共存している。陸で抱えた面倒は全て平戸の潮と風がきれいに洗い落としてくれるように、松には思えた》

 こうした一節には、川越さんが取材中に感じた平戸の印象が凝縮されているようだ。

 読了した松浦史料博物館の職員、関弘子さんは「川越先生は当館も取材しており、発行を心待ちにしていた。母の強さを描き、史実にとらわれない展開に驚いた。平戸には小説のモチーフになる歴史がたくさん眠っているようです」と感想を語った。

=2018/12/06付 西日本新聞朝刊=

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